研究課題/領域番号 |
16K18003
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
長谷 亜蘭 埼玉工業大学, 工学部, 講師 (10552953)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トライボロジー / アコースティックエミッション / ブレーキパッド / 可視化 / in situ観察 / 摩擦特性 / 摩耗特性 / 鋳鉄 |
研究実績の概要 |
本研究は,摩擦界面で実際に何が起こっているかを可視化(in situ観察:その場観察)し,同時にアコースティックエミッション(AE:材料の変形・破壊時に生じる弾性応力波)信号を計測することで,複雑なブレーキ摩擦材料のトライボロジー現象を解明し,その特性を定量的に評価する技術を確立させることを目的としている.人為的に特性の違いを持たせたブレーキパッド単純配合材(実用されているパッド材料から主成分のみを残したシンプルな材料)を用いて摩擦実験を実施し,各トライボロジー特性で発現するAE信号波形の特徴(振幅値や周波数スペクトルなど)を明らかにし,ブレーキ摩擦材料の摩擦特性(摩擦係数への温度や水の影響など)や摩耗特性(表面粗さや摩耗量など)との定量的な対応関係を見いだす. 平成28年度は,デジタル光学式顕微鏡に摩擦駆動系(ピン・オン・ブロック型)とAE計測系を組み込んだin situ観察・AE計測実験装置に,小型圧縮型ロードセルを組み込み垂直力計測部を追加するとともに,顕微鏡用高速度カメラ(ディテクト製)を搭載して,実機に近い摩擦速度での現象観察ができるように高速in situ観察・AE計測実験装置の構築(改良)を実施した.当初の計画通り,7種類のブレーキパッド単純配合材を製作した.構築した実験装置を用いて予備実験を実施し,計測系の調整,ノイズ対策や摩擦条件の設定を行い,摩擦界面のトライボロジー現象を高速in situ観察しながらAE信号が問題なく計測できることを確認した.結果として,硬質粒子や金属繊維などを配合したことによって現れるブレーキパッド材料特有のトライボロジー現象(掘り起こし摩擦や凝着摩擦)を確認することができ,AE信号波形変化にもその違いが現れることがわかった.さらに,ブレーキロータ材料である鋳鉄のトライボロジー過程を可視化することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画として掲げていた「計画1) 高速in situ観察・AE計測実験装置の構築(改良)」は達成することができた.次年度以降の計画へと円滑に移行できるよう,ピン・オン・ディスク摩擦・摩耗試験機による実験準備や運動解析の準備も併せて進めており,当初の計画を概ね順調に進展できている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,当初の計画通り「計画2) 現象解明のための高速in situ観察・AE計測実験」を実施し,本年度得られた結果の再現性を確認する.また,計画2)の実験の発展として,「計画3) 摩擦条件変化の影響を調査」で荷重,摩擦速度,摩擦面温度,水雰囲気の違いによるトライボロジー現象変化およびAE信号への影響について調査を進める.ここでは,熱電対内蔵型マイクロセラミックヒーターをブロック試験片ないしディスク試験片の上部に設置し,摩擦面の温度変化に対する摩擦特性と摩耗特性の変化を調査する.さらには,「計画4) 実機を想定した長摩擦距離での高速in situ観察・AE計測実験」として,ピン・オン・ディスク摩擦・摩耗試験機を用いて,実機を想定した長距離の摩擦・摩耗実験に取り組む.運動解析ソフトウェアを用いて,配合材(硬質粒子や金属繊維など)の動きを詳細に解析し,各現象をモデル化してAE発生メカニズムの理論的な考察を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度内に作成予定であった研究広報用チラシ・ポスターの作成・印刷を次年度へ先送りしたため,次年度への繰り越しとした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に参加する展示会を目標に研究広報用チラシ・ポスターの作成・印刷を行い,使用する予定である.
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