研究実績の概要 |
気泡流のボイド率(気相の体積分率)が概ね10%を超えるとき、音速の理論値と実験値が乖離することが、最近発見された(金川ら, 機論B, 2010; 上澤ら, 混相流, 2014)。そのような濃度の高ボイド率気泡流に対するニーズは、たとえばマイクロバブルを用いた洗浄技術開発(新井ら, 混相流, 2016)といった応用上の観点からも高まりつつある。本研究の目的は、上述の乖離が「なぜ?」生ずるのかを明らかにし、これまでにない高ボイド率気泡流を工学応用に資するための新たな理論体系「高濃度・気泡流音響学」を創成することにある。 初年度は、主に実験的観点からの研究を遂行した。ベンチュリ管(縮小・拡大管)内を伝播する圧力波の局所的なボイド率および音速を計測し、管内の流れに多大な影響を及ぼす気泡崩壊現象の可視化観測を行った。その結果、ボイド率が大きくなるにつれて、気泡流の平均化モデルに基づく音速の理論式の適用限界が示唆された。この結果を受けて、現在、理論的観点から、音速のモデルの検討を進めている。
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