研究課題/領域番号 |
16K18010
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中 吉嗣 明治大学, 理工学部, 専任講師 (10723421)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乱流計測 / 圧力変動 / 乱流構造 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,変動圧力センサとしてデジタルMEMSマイクロフォンを用いた壁面圧力変動場時系列測定システムの構築を行った。また,壁面圧力変動と乱流構造の関係について,高レイノルズ数乱流境界層の実験データベースを用いてこれを評価した。本研究で新たに開発する圧力変動計測システムについて,まず,市販のMEMSマイクロフォン1chを1MHzの基準クロックで駆動するテスト回路を用いて,圧力信号の計測が行えることを確認した。基準クロックと同期してマイクロフォンから出力される圧力信号は,パルス密度変調されたデジタル信号であり,これを波形データに変換するために,出力パルス列にデシメーションフィルタを適用した。デシメーションフィルタにはsinc2フィルタを用い,フィルタ幅を128と設定した。テストシグナルとして,2kHz および 3 kHzの音波をスピーカーから発生させ,これを計測した。次に,市販のデジタルMEMSマイクロフォンを14個搭載し,FPGAとの接続コネクタを有する基板を新たに設計・製作した。基板へのマイクロンフォンの実装にはリフロー工程によるはんだ付けを有効であることを確認した。その際,最適な温度プロファイルを決定した。試作回路では,隣り合うマイクロフォンの間隔を6mmとしたが,回路設計を工夫することで,マイクロフォンを密に配置することができることを確認した。作成したマイクロフォン回路をFPGAと接続し,FPGAより供給した基準クロックで14chのマイクロフォンを駆動した。14chすべてのマイクロフォンで,出力した2kHzと3kHzの音波の周波数が正しく測定できることを確認した。また,無音時の計測を合わせて行い,ノイズレベルの評価を行った。今後,マイクロフォンの多チャンネル化と乱流計測への適用を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は14chのマイクロフォンアレイ回路を新たに設計・製作し,回路製作に必要な知見を得た。また,マイクロフォンから出力されるパルス変調された圧力信号のデジタルデータを波形データに変換するためのデシメーションフィルタについて,フィルタ幅128のsinc2フィルタが有効であることを確認した。これらの知見は,2kHzと3kHzの音波信号を基準圧力信号として用い,これらが正しく計測できることにより確認した。また,無音時の計測データとの比較により,ノイズレベルの評価を行った。今後,当初の研究計画で予定されている1000ch程度の多チャンネル変動圧力測定システムの構築と,測定装置の乱流計測への適用を行う。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに14chのマイクアレイを作成した知見をもとに,1000ch程度の多チャンネル壁面圧力変動場時系列測定システムの構築を行う。乱流計測へのマイクアレイの適用に際し,回路の設計を工夫することでマイクロフォンの密な配置が可能となることを確かめている。マイクロフォンアレイ回路の変動圧力測定の空間分解能を流れ場の代表長さスケールとの比較により評価する。また,バックグラウンドノイズの処理について,多チャンネル計測の利点を生かし,デジタル信号処理によるノイズの低減を図る。開発した変動圧力測定システムを乱流場へ適用し,壁面圧力変動の空間分布の時系列データを解析することで,乱流圧力変動の時空間的な特性と壁面圧力変動に寄与している乱流構造の関係を明らかにする。これらの異なるスケールの乱流構造は,壁からの距離が異なる位置に存在しているため,異なる対流速度で乱流中を移動している。このような乱流構造の壁面圧力変動への寄与を評価するために,PIV装置を用いた速度場計測を行う。得られた速度・圧力の同時測定結果から,乱流構造と圧力変動の関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には,変動圧力場計測システムの構築に際して,当初の予定よりも少ないチャンネル数での試験を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には,当初の計画で予定されていた1000ch程度の多チャンネル壁面圧力変動場時系列測定システムの構築を行う。このため,マイクロフォン等の購入費用と基板の作成費用を支出する。
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