液滴および液柱内の表面張力流について研究を行い,以下のような知見が得られた. (1)懸垂液滴内に生じる対流場に関する実験を行った.ヒーターによって加熱された直径5 mmのアルミニウム棒の先端に絶縁性のシリコーンオイルの懸垂液滴を形成し,その下に冷却板を配置することで温度差駆動の表面張力流を誘起したあと,上部のアルミニウム棒と下部の冷却板の間に直流電圧を印加した際に起こる対流場の変化を観察した.本研究では,電極間の温度差,印加電圧,電場の向きを変えた実験を行った.上部をアノード,下部をカソードとしたとき,電極間の温度差が小さい場合(5 K以下)には,200 V以上の電圧を印加することで温度差表面張力流が抑制され,液滴内部の対流場が停止あるいは弱体化することが確認された.電極間の温度差が大きい場合(10 K以上)には,対流構造の変化は確認されたが停止するまでには至らなかった.また,電場の向きを変えることで対流抑止の効果が弱まることも確認された. (2)液柱内の温度差表面張力流とEHD(Electro-Hydro-Dynamics)対流の数値解析を行った.本研究では,過去に小型観測ロケットを用いた微小重力実験のデータを参考に作動流体の物性値や境界条件を設定し,温度差によって生じる表面張力流と直流電圧印加によって生じるEHD対流が共存した場合の数値解析を行った.温度差駆動表面張力流は,EHD対流の影響を強く受け,流動構造が大きく変化することがわかった.また,液柱内に存在するイオンの種類(陽イオンと陰イオン)によっても流動構造が大きく変化する様子が確認された. (3)高プラントル数のシリコーンオイル液柱に関して,温度勾配に起因する表面張力差のみによって駆動される流れに対する界面熱移動や動的な界面変形の影響を調査した.
|