研究課題/領域番号 |
16K18014
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
山田 格 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40772067)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロ流路 / 凍結現象 / 数値計算 / 散逸粒子動力学法 |
研究実績の概要 |
マイクロ流路内凍結現象の解明にあたり,当該年度は実験装置の製作および予備実験,およびDPD法による数値計算を行い,以下の成果を得た. ①実験装置の製作および予備実験:ペルチェ素子を用いたマイクロ流路冷却システム,およびズームレンズによる観察機構を構築し,マイクロ流路内の凍結現象が観察できる実験装置を組み立てた.また,結露防止のためのアクリルケースの作製を行い,低湿度環境を実現した.さらに予備実験を行い,マイクロ流路出口における流動の有無を観察することにより,凍結を確認することができた. ②DPD法による数値計算:マイクロ流路の表面形状およびぬれ性のモデル化を行った.表面形状に関しては,モデル化する上で重要なマイクロ正方キャビティ流れにおける凍結現象に着目し,DPD法による数値計算を行った.レイノルズ数Re = 10に固定し,上下壁の温度差,および側壁の温度境界条件の影響について調べた.この結果,上下壁の温度差により氷層の厚さが変化すること,側壁の温度境界条件により形成される氷層の形状が異なること,さらに氷層が指数関数的に成長することを確認した.ぬれ性のモデル化に関しては,水粒子と固体壁粒子の間の保存力に差異を与えることで,壁面ぬれ性を幅広い範囲でコントロールできることを確認した.さらに同モデルを用い,異なるぬれ性を有する壁面上を流れる水滴の凍結挙動について調べた結果,親水性の壁面において,広範囲に薄い氷層が形成されることを確認した. ③DPD法の計算精度の考察:上述のモデリングの他,DPD法の計算精度についての調査が必要であることがわかり,このための予備計算を行った.本計算では時間進行法の精度について着目し,常微分型ルンゲクッタ法の導入による高精度確保の可能性を調査した.この結果,高精度確保には確率微分方程式型の手法を導入する必要があるという結論に至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,マイクロ流路観察実験装置を製作することができた.また,DPD法を用いた表面形状およびぬれ性のモデル化についても,必要な数値モデルの作成を行うことができた.さらに,計算精度の確保という新たな要調査課題を見出し,これについても一定の成果を得た.数値計算については,Numerical Heat Transfer, Part A,第53回伝熱シンポジウム,5th Micro Nano FLows Conference,ならびにInternational Symposium on Micro-Nano Science and Technology2016 にて成果発表をした.
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今後の研究の推進方策 |
凍結を伴う水流動実験に関しては,さらに詳細な凍結現象の観察を行うため,近赤外分光(NIR)カメラの導入による2次元温度場計測を行う.本手法導入により,凍結前後のリアルタイム温度計測を実現し,流量や冷却温度の凍結におよぼす影響をより詳細に解明する.さらに表面ぬれ性,表面形状の異なるマイクロ流路の製作し,これらを用いた実験の実施,およびぬれ性,表面形状の凍結現象におよぼす影響を調査する. DPD法を用いた数値計算に関しては,森西教授と協議し調査を開始した時間進行法の精度についてさらに調査を行い,詳細な精度の確認,および計算結果の信頼性確保に注力する.その後,昨年度作成した表面形状モデルおよび表面ぬれ性モデルを用い,実験と同条件での計算を実施し,計算結果と実験データとの比較を行い,モデルの妥当性の検証,および凍結現象の定量的な考察を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置製作において,予備実験開始時までに必要とした製作費は,当初の予定よりも,自作できた部品が多くあったため,計上額よりも下回った.また前述にあるように,予備実験の段階からNIR法による温度計測の必要性が高まったため,これを考慮した下記の予算を計上するに至った.
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次年度使用額の使用計画 |
前述のとおり,昨年度製作した実験装置では,流路内の温度測定を行うには至らなかった.よって次年度は,NIR法による温度場計測を実現させるため,NIRカメラの購入費を計上する.また,NIRカメラ導入に必要な部品購入費およびその他消耗品費を計上する.
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