研究課題/領域番号 |
16K18015
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
高垣 直尚 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (00554221)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境流体力学 / 微粒化 / 風波 / 砕波 / 台風 |
研究実績の概要 |
台風など熱帯低気圧下における高風速時の風波気液界面を通した運動量輸送機構を明らかにし,信頼性の高い輸送モデルを構築することは,台風の強度を正確に見積もるうえで極めて重要である.既往研究では,台風下のような高風速時の海面近傍の流動場は,液滴の飛散や気泡の巻き込みなどの激しい砕波を伴う複雑な気液二相乱流場を呈し,本砕波現象が海面を通しての運動量輸送量を抑制する可能性が示唆されている.しかし,その砕波機構は構造の複雑さゆえに全く解明されていない.そこで本研究では,室内実験手法および直接数値計算法を使用して,高風速時の激しい砕波機構の解明および砕波を伴う気液界面を通しての運動量輸送機構を解明し,新たな運動量輸送モデルを構築することを目的とする.本年度は,九州大学の大型風波水槽を使用して,長吹送距離における風波の作成を可能とするループ法の検証実験を行った.検証実験では,ピトー管,差圧計,抵抗式波高計などを使用して,気流速分布および波高測定を行った.これらの気流・波高データを,昨年度までに京都大学で取得した気流・波高データと比較・検証することにより,京都大学において実施されたループ法の詳細検証を行った.その結果,主流方向長さが高々15mの風波水槽を使用して,吹送距離が約50mと水槽の全長よりも長い位置での風波を作成可能であることを確認した.さらに,Level-set/VOF法を使用した直接数値計算コードの適用可能性の検証を行った.その結果,ダムブレークなどの単純な気液界面の微粒化現象を再現可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,九州大学の大型風波水槽を使用して,長吹送距離における風波の作成を可能とするループ法の検証実験を行った.検証実験では,ピトー管,差圧計,抵抗式波高計などを使用して,気流速分布および波高測定を行った.これらの気流・波高データを,昨年度までに京都大学で取得した気流・波高データと比較・検証することにより,京都大学において実施されたループ法の詳細検証を行った.その結果,主流方向長さが高々15mの風波水槽を使用して,吹送距離が約50mの風波を作成可能であることを確認した.さらに,Level-set/VOF法を使用した直接数値計算コードの適用可能性の検証を行った.その結果,ダムブレークなどの単純な気液界面の微粒化現象を再現可能であることを確認した.以上より,本年度の研究は,おおむね順調に進展したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
29年度に行う高風速時の砕波測定実験では,砕波強度を特徴づける諸量の測定を行い,その風速依存性を明らかにする.また,運動量輸送実験においては,高風速の状態において風波気液界面を通しての運動量輸送量を測定し,抗力係数を推定する.低風速から高風速(風速10~40m/s)までの風速条件において運動量輸送実験および波測定実験を実施する.また,28年度に改良された計算コードを使用して,砕波を伴う風波気液界面を有する気液乱流場を対象に直接数値計算を実施する.なお,本計算はJAMSTECのスーパーコンピュータを用いて並列計算により実施するが,計算領域のサイズは要する計算時間を確認しながら決定する.風速条件は,実験と同様の風速10~40m/sの合計4ケースとする.計算結果を元に,実験と同様の砕波強度を特徴づける諸量を測定するばかりでなく,実験では観測することができない界面近傍の乱流構造の詳細検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費は,前任校時代に応募したものであり,現所属先に異動した後に採択された.そのため,前任校で所有していた大型風波水槽や高速風洞水槽といった占有機器を使用できなくなったため,一部研究計画を変更して実施している.また、研究者の異動に伴い前任校から現所属先への備品移管作業が完了したのは,本科研費の開始後半年の時点であり,その間,適切な速度で研究の実施が困難であった.以上の理由により,今年度使用額は当初予定の半分程度であり,次年度への持越しが必要となった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,九州大学の大型風波水槽を使用し,高風速時の砕波測定実験を実施する.砕波強度を特徴づける諸量の測定を行い,その風速依存性を明らかにする.また,運動量輸送実験においては,高風速の状態において風波気液界面を通しての運動量輸送量を測定し,抗力係数を推定する.低風速から高風速(風速10~40m/s)までの風速条件において運動量輸送実験および波測定実験を実施する.これらの実験のために,大型風波水槽の消波装置作成,整流胴の作成などが必要となるため,これらの作成費用として科研費を使用する予定である.
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