研究課題/領域番号 |
16K18019
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
守 裕也 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (80706383)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乱流制御 / 境界層流れ / 進行波 / 直接数値計算 |
研究実績の概要 |
乱流境界層における摩擦抵抗低減制御の確立は輸送機の燃費削減などに大きな貢献ができる.本研究では,国内外で提案されている乱流制御手法と比較し有利な点を持つ進行波状制御の効果の詳細な調査を行う.この進行波状制御において,主流と同じ方向に波が進行する下流進行波では乱流摩擦抵抗を著しく低減させる再層流化効果をもち,主流と反対方向に進行する上流方向進行波では摩擦低減と熱伝達促進が同時に起きる非相似な制御効果が生じる,2つの大きな利点を持つ.本研究ではこれまで未調査である乱流境界層における進行波制御の再層流化効果/非相似効果が生じるパラメータ群とその発現メカニズムを,直接数値シミュレーションを用いて明らかにすることを目的とする.乱流境界層において再層流化/非相似効果を狙う制御を行う例は他に無く,本研究で明らかになる制御パラメータ群とメカニズムは将来の乱流抵抗低減・伝熱促進制御デバイスの設計及び実用化に寄与できる 本年度は乱流境界層計算コードの開発およびテストケースについて計算を行った.温度場についても温度の輸送方程式を実装し,また制御なしの場合の統計量について公開されているDNSデータとの比較を行い,両者の間で良好な一致を確認した.さらに下壁からの進行波状制御を加えた流れのシミュレーションを行い,下壁からの進行波が流れに影響を与え流れ場を変化させる事がわかった.今後は制御パラメータを変化させることで,より網羅的にパラメータ依存性を調査し,その制御パラメータが有効である理由を様々な角度から考察を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,乱流境界層の直接数値シミュレーション計算コードを作成し,その妥当性についての調査を行った.加えて温度輸送方程式を実装し,非相似制御が期待できる上流方向進行波についてもシミュレーションが行えるよう整備した.制御である進行波を与えたものについては,いくつかのテストケースを行い,制御が流れに与える影響を調査した.これら計算の妥当性調査やテストケースの検証は,本研究における最終的な目的である「制御効果の調査」及び「空間発達の影響調査」に役立つものであり,現在までで研究の達成度は「おおむね順調」であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度はいくつかのテストケースを行い,進行は制御が流れに与える影響を調査した.今後はパラメータを変化させることで,より網羅的にパラメータ依存性を調査する.更に,その制御パラメータが有効である理由を様々な角度から考察を行う.また,結果に対して理論的な知見を与える為,摩擦抵抗・熱伝達率に関する恒等式を用いた検討を行う.そのことで摩擦抵抗値及び熱伝達率に対する,乱流渦による寄与,進行波の直接的な寄与,空間発達の寄与など,それぞれの寄与ごとに分類することが可能となり,抵抗低減・熱伝達促進効果発現メカニズムの考察に役立つと期待できる.
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次年度使用額が生じた理由 |
温度の輸送方程式および計算領域の拡大に当初より時間がかかり,制御効果を網羅的に調査するパラメトリックスタディを次年度に行うこととしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度,計算コード実装の遅れからできなかったパラメトリックスタディを行う専用の高速計算機を購入する予定.
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