本研究では中赤外吸収分光法を応用して炭化水素成分を計測することにより、燃料性状を把握する手法を開発するとともに、その燃料性状の着火性を、化学反応モデルを用いて予測できるようにすることを目的とし、特にバイオ燃料に特化して、燃料性状の計測手法と着火特性の予測に必要な化学反応モデルの構築を進めた。 2年度目は、バイオ燃料の中でも、エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)の計測に絞り、1年度目に決定した計測波長の量子カスケードレーザーを光源に用意し、ガソリン中に含まれるETBEの濃度を計測できる装置を構築し、ETBEの濃度を市販のガソリンを用いて計測した。 さらに、バイオ燃料として利用されているエタノール、ETBE、今後バイオ燃料として利用される可能性のある2メチルフランをガソリンに混合した場合の着火遅れ時間を、急速圧縮装置を用いて計測し、その着火遅れ時間を予測できる化学反応モデルの検証を実施した。エタノールを混合した場合は、概ね既存のモデルで着火特性を予測可能であるが、ETBEについては、着火特性を概ね予測できるが、低温域の着火特性について、改良が必要であることが明らかになった。2メチルフランについては、既存燃料に混合した場合の燃料の着火特性を予測できるモデルがなかったことから、化学反応モデルを新たに構築した。以上より、ガソリンに混合されるバイオ燃料として考えられる化学種を既存ガソリンに混合した場合の着火特性について予測できるようになった。 2年間の研究期間において、当初の目的を概ね達成した。今後は、燃料のオクタン価などの把握に中赤外分光を応用できないか、研究を継続していくとともに、中赤外分光による炭化水素計測に必要な分光定数の取得など、中赤外分光の発展に資する基礎研究も継続していく。
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