電極単一層化した固体高分子形燃料電池のガス輸送特性を評価するためにマイクロ流体デバイスと光学式酸素濃度計を用いた計測システムの構築を行い,電極構造とガス輸送特性の関係解明のための研究を進めた. まず,多孔質構造の異なる電極を作製するためにカーボンブラック(CB)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を添加した.形成される多孔質電極の白金触媒量及び電極塗布量が一定となるように条件を設定し,電極を作製し,走査電子顕微鏡及びガス吸着装置を用いた構造解析を行った.ここでは,MWCNTの添加によりマイクロクラックの発生が抑制されること,電極厚さが減少し幾何学的な空隙率が低下することが示された.一方,ガス吸着における有効空隙率はMWCNTの添加により増加する結果が示された. 次に,構築した計測システムを用いCB添加及びMWCNT添加電極の評価を行った.両電極の比較においては,MWCNT添加電極で高い酸素透過性能を示し,幾何学的空隙率から導出された透過性能の推定値とも良好な一致を示した.一方,CB添加電極では計測値が推定値を大幅に下回った.これらの結果は,MWCNT添加によりガス輸送に寄与する細孔容量が増加したことを示すものであり,電極構造解析の結果と定性的に一致する.本評価手法により,燃料電池性能に影響を及ぼす電極のガス輸送特性を直接評価することが可能になった. 以上の研究と並行し,赤外顕微イメージングによる燃料電池マイクロ流路内液水可視化を実現し,液水生成挙動と電池性能の関係を明らかにするための研究を実施した.また,電極構造の科学的知見に基づく制御に向けて,電極材料を分散したスラリーのレオロジー特性評価を実施し,電極スラリー内部状態の特徴化に向けて有効な手法となることを示した.
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