昨年度までに、血液を希釈するための基本的な手法は確立しているため、今年度は実際に全血を希釈することと、希釈後に行う種々のプロセスについて検討し、最終的に1枚のチップに統合することでデバイスを完成させた。 血液の希釈に関しては、希釈にオレイン酸液滴を使用すると、オレイン酸と赤血球が反応して溶解する現象が確認されたことから、オレイン酸に変わって気泡を使用した。また、希釈後の溶液を時空間的に均質化するために、カオス流を生成するチャンバーを作製した。チャンバーの下流では希釈血液と気泡を分離するためのセパレーター、および希釈血液と試薬を反応させるためのチャンバーを設け、チャンバーには試薬を保持するためのキャピラリーバルブを設置した。さらに、試薬と血液との反応を目視で確認できるようにするために、複数種類のチャンバーを作製し、チャンバー内のスリットにおいて、試薬との反応により凝集した赤血球をトラップする機構を開発・最適化した。 血液の希釈度合は、血液・希釈溶液 (PBS)・気泡の流量を制御することで変化させ、反応・検出に最適な希釈度合を検討した。その結果、全血を約5倍に希釈することで最適な検出結果を得られることが明らかになった。また、最適化をしたチャンバー内で試薬と希釈血液を反応させた結果、赤血球凝集度が非常に低い場合においても目視で凝集の有無を確認できることを示した。最終的に、開発・検討した各プロセスを1枚のチップ上に統合したデバイスを用いて血液型判定実験を行い、5分程度で、目視で検査結果を得られることを示した。
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