研究課題/領域番号 |
16K18036
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長 真啓 茨城大学, 工学部, 助教 (30735105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁気浮上モータ / 5軸制御 / 小児用人工心臓 / 遠心血液ポンプ / 流体粘性減衰 / 流体力 / 小型化 |
研究実績の概要 |
流体機械融合による磁気浮上モータの超小型化の目標のもとに,H28年度に引き続き,磁気浮上人工心臓ポンプ駆動時のポンプ内流体力,粘性減衰を評価し,学会発表,学術論文投稿を行った.また,H28年度のポンプ駆動時の,モータ動特性,消費電力特性の結果を受け,人工心臓駆動時の磁気支持安定性向上,モータ消費電力削減を図るためのモータ磁気回路設計を行った.本設計では,現行モータの寸法を維持しつつ,モータ磁気回路を構成する主要素であるステータ突極の長さ,断面積,エアギャップ長,永久磁石厚さ等を変更し,磁気浮上モータの電磁石と永久磁石がバランスよく支持力を発生可能なモータ幾何学形状を検討した.設計には,磁気等価回路を用いたモータ発生磁気支持力の理論計算,漏れ磁束や磁気飽和を考慮できる有限要素法三次元磁場解析を活用した.磁場解析による磁気回路を改良したモータの支持力,回転トルク静特性の推定結果は,軸方向磁気支持力を65%増加,径方向磁気支持力を8%増加,傾きトルクを53%増加,回転トルクを48%増加可能であった.本設計により最終決定した形状の磁気浮上モータを製作し,モータ発生磁気支持力の静特性,トルク特性を評価した.製作したモータは,径方向磁気支持力の増強が認められなかったものの,軸方向磁気支持力が42%増加,傾きトルクが80%増加した.また,モータが発生する静止トルクは34%増加し,モータ回転時(3000-5000 rpm)の消費電力は最大で5W程度低減でき,最高モータ効率が5 %以上向上した.本年度の終盤には,ポンプ性能と磁気浮上モータの動特性がそれぞれ評価可能な血液ポンプを製作し,ポンプ駆動時の磁気支持性能を評価している.H30年度には,本試験機を用いたポンプ内流体力,粘性減衰効果の検証を行い,流体機械(血液ポンプ)と融合することによる磁気浮上モータの小型化設計を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の予定では,加振機を用いた励振等を活用して,流体粘性減衰を調査することを検討していたが,H28年度に計測した,ポンプ駆動時に浮上インペラに働く流体力推定,粘性によるインペラ制振効果の解析を深めた.また,磁気浮上ポンプ駆動実験の際に,磁気浮上モータの性能改良が見込めること,低消費電力化が課題となったことから,モータ磁気回路の再設計,製作を行った.本改良により,モータ磁気支持力増強,エネルギ効率の向上が確認できている.改良モータを用いることで,より詳細にポンプ組み込みによる流体の影響を考慮した設計が可能となると考える.本年度の研究での進捗を以下にまとめる. ①磁気浮上モータの磁気支持力静特性の測定結果をもとに,ポンプ駆動条件を様々に変更(発生揚程,流量,回転数)しながら,時の浮上インペラの浮上位置,モータ印加電流等を用いて流体力の推定,振動特性,エネルギ効率等を解析した.本評価結果を学会発表するとともに,日本AEM学会誌へ論文投稿した. ②磁気浮上モータの磁気回路を再設計し,モータ発生磁気支持力の増強,エネルギ効率の改善を行った.磁気等価回路を用いたモータ発生磁気支持力の理論計算,有限要素法三次元磁場解析を活用し,製作可能かつ最も支持力を増加できるモータの設計を行った.磁気浮上モータの磁気飽和が起こらない範囲で,バックヨーク厚さおよび突極断面積の最小化を行い,突極長さとコイル巻き数最大化した.また,永久磁石厚さとエアギャップ長の調節を行い,負のばね剛性の過大な増加を抑えつつ,能動的に磁気浮上モータが発生できる磁気支持力を増強した.本設計により,十分な磁気支持力増強と,エネルギ効率向上が確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
改良モータと製作血液ポンプを用いて,ポンプ駆動時の動特性,振動特性,ポンプ性能を評価する.併せて,ポンプ内流体力の推定,粘性減衰効果の確認,可能であれば,加振機を用いた強制励振による粘性減衰の推定を行う.本評価より得られた知見をもとに,最終年度に世界最小の磁気浮上小児用人工心臓を実現できるように,磁気浮上モータを流体機械と融合することでどこまで小型化できるか明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 申請では,加振機および加振機を用いたダイナミクス特性評価実験系を設備備品として計上していたが,上記備品は高額であるため,まずは磁気浮上ポンプ試験機を用いて流体力推定,粘性減衰効果の検証を行った.このため,加振機導入費用がなくなった分の経費が余った.一方で,磁気浮上ポンプ試験機の結果を受け,磁気浮上モータ改良の必要性が出たため,モータ設計に用いる汎用有限要素解析ソフトのライセンス更新に経費を使用した.また,改良型磁気浮上モータおよび血液ポンプの製作に経費を使用した. (使途計画) 外部から磁気浮上ポンプ試験機へ励振できる方法があれば,粘性減衰を推定するのに有効である.一方で,加振機導入には費用が掛かるため選定が困難である.このため,他の加振方法の検討または,電磁石コイルによる強制加振により粘性減衰効果を評価することを視野に入れて研究を進める.また,H29年度に開発した磁気浮上ポンプの性能評価をもとに,申請時の計画通り,磁気浮上モータの更なる小型化設計,製作を計画しており,本項目に経費を使用する予定である.
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