• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

熱弾性を伴うホットジャダーに対する接触自励振動からのアプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 16K18042
研究機関大分大学

研究代表者

中江 貴志  大分大学, 理工学部, 准教授 (80579730)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード自励振動 / ディスクブレーキ / 熱変形 / 時間遅れ / パターン形成 / ジャダー / 安定判別
研究実績の概要

近年,高速域でブレーキを制動した際,発熱が原因でHot Judderと呼ばれる新たな振動問題が多発している.しかし,Hot Judderは熱と振動が原因となる現象であるため,自動車業界では対策法はもとより,発生メカニズムも解明されていない.本研究ではHot Judderを時間遅れを伴う自励振動によりディスクの表面にHot spotが発生するパターン形成現象の1つとして捉え,解析モデルを考案し,発生メカニズムを解明している.平成29年度は,以下の2つの項目について研究を実施した.研究実績の概要について以下にまとめる.
1.基礎実験を用いたホットジャダーの再現実験について
平成28年度中に製作した,1自由度系の基礎実験装置を用いて,引きずり試験を行い,ロール端面の表面温度を熱伝対で測定するとともに,レーザー変位計を用いて,ロール表面の振動変位を測定することができた.
平成28年度中に作成した実験装置は,ロールの端面に摩擦材を押付け引きずり試験を行う方法を採用していたが,ロールの表面温度が十分に上昇せず,ホットジャダーの再現できないことがわかった. そこで,摩擦材をロールの端面でなく側面(両面)に押付ける装置を再設計した.この装置において,ロールの表面温度を上昇させることができた.
2.理論的アプローチによるホットジャダーのメカニズム解明について
平成28年度中には,1点接触でのディスクの過熱・冷却による非定常熱伝導・熱伝達解析を行い,ローター表面の温度・膨張量の再現を行った.また,1自由度系の解析モデルを構築し,膨張量を運動方程式中の接触力に反映し,系の安定判別を行い,ホットジャダーに相当する不安定振動が確認できた.平成29年度は,ディスク,インナーおよびアウターキャリパのそれぞれディスク面直方向の運動について,より実機に近い3自由度系の解析モデルへ拡張した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

基礎実験では,摩擦材の押付け方法をロールの端面でなく側面(両面)に変更し,ロールの表面温度を上昇させることができた.この新しい実験装置において,再度実験モード解析を用いた打撃試験を行い,モードパラメータを求め,これらのモードパラメータを用いた理論解析でHot Judderが発生することを確認した.
理論解析では,平成28年度中に構築した1自由度系の解析モデルを用いて,新たに数値シミュレーションを行った結果,シミュレーションにおいてもHot Judderの発生およびHot Spotの発生を再現することができた.また,Hot Spotと振動モードとの位相の関係から,接触力が大きいところでディスク表面の膨張量が大きくなりHot Spotが発生することがわかった.さらに,より実機に近い3自由度系の解析モデルへ拡張し,1自由度系と同様に,安定判別およびシミュレーションによりHot JudderとHot Spotを再現した.

今後の研究の推進方策

平成30年度は,理論・基礎実験との比較検討およびHot Judderの理論・実験両面によるメカニズム解明を実施する.また,実験と理論の両面から,減衰による効果,あるいは動吸振器の制振効果を確認し,最適設計法を提案する.さらに,実機との整合性を確認する.
基礎実験装置において,Hot judderの再現が可能となった場合,温度分布・振動測定から,Hot Judderの抑制実験を行う.また,Hot Judderの抑制に必要な,動吸振器のチューニング法および最適な減衰比について,その設計法の提案を行う.
理論解析では,従来までの点接触モデルからより実機に近い分布接触モデルに変更し,パッドの周長さと発生しやすいHot Spotの数との関係を調べることで,Hot Judderを抑制可能なパッドの設計を提案する.また,理論解析でも動吸振器を適用し,Hot Judderを完全に抑制可能な動吸振器の最適設計法の検証を行う.さらに,ブレーキオン・オフの繰り返しを想定した,シミュレーション解析を行い,Hot Judder発生の一連の現象解明を行う.

次年度使用額が生じた理由

(理由)
当初平成29年度中に2つの国際学会への参加を予定してしたが,ロンドンで行われたICSV24にのみ参加し,この出張旅費として使用したため,海外出張一つ分の旅費約40万円の次年度使用額が生じた.
(使用計画)
2018年9月にリスボンで行われる国際学会14th International Conference on VIBRATION ENGINEERING AND TECHNOLOGY OF MACHINERY (VETOMAC XIV) に参加し,この研究課題に関する成果について講演発表を行うことが既に決定している.この海外出張(7泊8日分)の旅費として使用することを計画している.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Basic research on hot judder of car disc brakes from the viewpoint of self-excited vibration with time delay2017

    • 著者名/発表者名
      Kohei Takahashi, Takashi Nakae, Takahiro Ryu
    • 雑誌名

      24th International Congress on Sound and Vibration, ICSV 2017

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] ディスクロータ付加質量によるブレーキ面内鳴きへの影響2017

    • 著者名/発表者名
      中江 貴志
    • 学会等名
      第18回摩擦振動を中心とした談話会
  • [学会発表] ロータ質量付加によるディスクブレーキの面内鳴きへの影響2017

    • 著者名/発表者名
      後藤 裕樹,劉 孝宏,中江 貴志
    • 学会等名
      Dynamics and Design Conference 2017

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi