近年,高速域でブレーキを制動した際,発熱が原因でホットジャダーと呼ばれる新たな振動問題が多発している.しかし,ホットジャダーは熱と振動が原因となる現象であるため,自動車業界では対策法はもとより,発生メカニズムも解明されていない.本研究ではホットジャダーを時間遅れを伴う自励振動によりディスクの表面にホットスポットが発生するパターン形成現象の1つとして捉え,解析モデルを考案し,発生メカニズムを解明している.平成30年度の研究実績の概要について以下にまとめる. 平成29年度までに,ローターの過熱・冷却による非定常熱伝導・熱伝達解析を行い,ローター表面の温度・膨張量の再現を行った.また,3自由度並進系点接触解析モデルを構築し,膨張量を運動方程式中の接触力に反映し,系の安定判別を行い,ホットジャダーに相当する不安定振動が確認できた.平成30年度は,ローター表面摩耗を考慮した,数値シミュレーション解析を行った.その結果,数値シミュレーションにおいてもホットジャダーおよびホットスポットの発生を確認した.さらに,ホットスポットによってローター表面の膨張量が大きくなった場所で,それに比例して摩耗が進むことがわかった.ローター回転数を変化させると発生するホットスポットの数が変化することがわかった. また,上記の点接触解析モデルを,分布接触モデルへと拡張し,同様の安定判別によって,パッド接触幅と発生するホットスポットの数との関係について調査した.その結果,それぞれのホットスポットの数に対するローターの変形形状によって生じるパッドローター間の接触力変動の総和が,最も小さくなるように,パッドの周長さを決定すれば,ホットジャダーを抑制することができることがわかった.
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