本研究の目的は,自動車運転時における潜在リスクの予測フェーズを「限りある人の能力を補完する運転支援機構」に導入し,潜在リスク予測に基づいて「人と機械が制御権限を共有しながら安全制御を効果的に継続できるシェアードコントロール」を開発することである.平成28年度は,1)農工大が保有する事故・ヒヤリハットデータの分析に基づき,歩行者飛び出し事象の数理モデルを構築し,2)ワーストケースシナリオの設計に基づく規範速度算出機構を構築・検証し,緊急時において既存の衝突回避ブレーキが有効的に作動しうる速度域に事前に減速させる予見的制動制御を構築しただけでなく,また3) 触覚的フォースフィードバックを与えることが可能なアクティブペダルを導入した運転支援システムを開発した.これらの状況適応的機能配分による早期介入支援に関わる成果を基盤に,平成29年度は,常に制御ループ内に人を留めることを目的とした「アクティブペダルを用いた触覚的シェアードコントロール」を構築した.具体的には,4) 加速・定常・減速の自動車運転の前後方向タスクで要求されるペダルストローク開度を3つの領域に分割した「ワンペダル走行モード」を新規に提案し,5) アクセルペダル反力による「ハプティックフィードバックループ」をワンペダル走行モードに結合することによって,「危険予測運転」を含む前後方向タスクにおける人間と知能機械のインタラクションの機会を創出するシェアードコントロール(触覚を通じて常に制御ループ内に人を留める支援方策)を開発した.アクティブペダルの反力支援の強さを潜在リスクの度合いに応じて動的に変更する stiffness feedback の支援方策,また人間機械系を具体化するだけでなく,6) ドライビングシミュレータ環境に,提案システムを実装することで,認知工学的にシステムの有効性を検証した.
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