研究課題/領域番号 |
16K18054
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
安孫子 聡子 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40560660)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 航空ロボット / 推力ベクトル可変機構 / 推力楕円体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,推力ベクトル可変機構を有する航空ロボット(UAV)による高機動作業の実現である.現在,広く普及している所謂マルチコプタは外乱に対する応答性の低さやその性能限界から利用範囲が限られるという問題がある.本研究では,推力ベクトル可変機構により UAVの飛行性能を向上させ,より広い分野でのUAVの利活用を目指す.一方,推力ベクトル可変機構の特徴を活かした空中作業の実現は未だ前例がなく,推力の特異点を考慮した飛行制御則の構築や目標姿勢の決定方法等の学術的課題の解決が必要である.本研究では,推力ベクトルの可変領域に対し,①推力楕円体という新たな概念を定義し,UAVの飛行性能を定量的に評価する指標を提案する.さらに,②推力楕円体を用いUAVの消費推力を考慮し,目的作業に応じた最適な飛行形態計画方法を確立することを目指す.2016年度は,当初計画の通り,多リンク系動力学モデルとして,推力ベクトル可変機構を有する航空ロボットをモデリングし,任意の設計パラメータの導入を可能とした.それにより,推力と飛行姿勢の関係性を明確に推定することが可能となった.現有する推力ベクトル可変航空ロボットに対する推力と飛行姿勢の関係を導出し,ホバリング飛行可能姿勢を定量的に評価した.推力ベクトル可変機構の機構設計により,飛行姿勢と推力変化の関係性を見出し,より効率的な推力ベクトル可変機構UAVの検証を数値シミュレーションにより実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り,多リンク系動力学モデルとして,推力ベクトル可変機構を有する航空ロボットをモデリングし,任意の設計パラメータの導入を可能とした.それにより,推力と飛行姿勢の関係性を明確に推定することが可能となった.現在導入している飛行モードの方法論の整合性の検証をしたうえで,今後,入力が8自由度である冗長性に対し,同航空ロボットに適した,飛行計画法を確立する.また,飛行実験検証システムとして,モーションキャプチャシステムを用いた機体位置情報のフィードバック制御が可能となるシステム構築を行った.姿勢情報は,機体搭載IMUセンサに基づき,制御しているが,モーションキャプチャシステムからのフィードバックも可能である.これにより,次年度以降に確立する飛行軌道計画の有用性を検証していく.
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今後の研究の推進方策 |
飛行可能領域と飛行性能を拘束条件とし,飛行姿勢・推力ベクトルを決定変数とする最適化問題として定式化する.飛行性能は上述の飛行力楕円体を指標とする.飛行可能領域は,目的作業と環境が既知であるという仮定の元,決定する.仮想的に飛行可能領域を制限して設定することで,曲面などをならいながら飛行する飛行形態計画が可能となる.これら2つを拘束条件とし,目標飛行を実現する飛行姿勢・推力ベクトルを非線形有制約最適化問題の解法の一つである逐次二次計画法(SQP:Sequential Quadratic Programming)を用いて,定式化することを試みる.また,効率的な研究進行のため,市販の数値計算ソフトウェアMatlabの最適化ライブラリOptimization Toolboxを用いる.随時、2016年度に構築した実験システムにて検証を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に最適アルゴリズム計算用計算機を計上しているが,シミュレーションの検証結果を踏まえ,必要仕様を再検証し,次年度以降の購入と変更したため.また,飛行実験の際の機体の修理・改良等において機体パーツを消耗するため,次年度以降に増える飛行実験に備えた形となる.
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由を踏まえ,必要仕様を満たした計算機の購入,飛行実験の際の機体の修理・改良等において機体パーツの設計・製作費に充当する.
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