研究課題/領域番号 |
16K18055
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高藤 美泉 日本大学, 理工学部, 助手 (30755418)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タービン / MEMS / ベアリング / 電磁誘導式 / 積層セラミック / 磁性体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は5mm角程度の小型な電磁誘導式発電機の開発にある。 平成29年度の研究計画のうち、1つ目は電磁誘導式発電機の出力低下に大きく影響する磁気回路の磁束漏洩の減少を目的としていた。これについては前年度に行ったタービンの回転機構における小型ベアリングの導入が深く関係する。これまでの空気軸受型のタービンでは回転部であるロータと磁石は一体になっている必要があったが、これにより磁石の下部に流路層を形成する必要があり、磁石と磁気回路のギャップが問題となっていた。これについてベアリングを導入したことによりロータと磁石の位置関係を軸を介して自由に設計できるようになった。そのため、磁気回路形状について径方向に着磁した磁石と面方向に着磁した磁石の双方で設計・解析・検討を行った。径方向着磁の磁石についてはタービン下部から張り出した状態の磁石を取り囲むように磁気回路を配置する構造を検討した。また、面方向着磁の磁石についてはこれまでと同様に磁石下部に磁気回路を設置したが、流路を形成する必要がなくなったことからギャップをこれまでより狭くすることができた。それぞれの磁気回路において効率化のためにコイル部だけでなく磁束を導入するような設計を検討した。具体的には、囲い込み型磁気回路には磁石に対してコイル部まで磁束を誘導する凸形状の磁性体を形成し、閉磁路となる設計とした。磁石下部に形成した磁気回路は磁石上部に漏洩する磁束を誘導するために磁性ヨークを磁石上部に取り付け、閉磁路に似た設計とした。それぞれ磁場解析を行った結果、磁石からの磁束が磁気回路に導入されていることが分かったが、円盤状の磁石に対して曲面をもつ誘導部の形成が必要なことも明らかになった。 さらに、回転機構の改善としてこれまでの平面翼ではなくリム型のタービン翼を導入することで最大回転数29,000rpmを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究の目的はエアタービン機構と組み合わせるための磁気回路の設計・試作と積層セラミック磁気回路の作製プロセスについての研究であった。また、磁気回路の設計については磁場解析を行うことも目標としていた。これについて磁束を導入するための設計・解析を行い、それに基づき試作を行った。エアタービンの機構において高速回転化の設計がスムーズに行えたことから、本年度の目標であった単相発電機のみではなく三相発電機についても磁気回路の検討が可能となったことから本件は当初の計画よりも進呈しているといえる。また、積層セラミック磁気回路の作製プロセスにおいては磁束誘導部の設計と形成について有効性を明らかにすることができたが、低抵抗化および磁束損失の抑制については検討する要素がまだあるといえる。これについては異種成形について特に議論する必要がある。 また、先に述べたタービン機構の高速回転化には前年度に明らかになったベアリング機構の導入方法の改善に加え、回転部であるロータの翼形状についても検討行った。これによりこれまでのMEMSの特徴であった平面構造を持つ形状ではなく、リム型とすることでより効率的に回転することが分かった。これにより29万回転を実現したことから今後は起電力等を考慮する必要があることも明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法として、まず磁気回路における異種成形について確立する。これにより成形時のエアギャップによる磁束の漏洩や、三相磁気回路における各相のインダクタンス値のずれを補正する。また、磁気回路の微細化においてナノペーストによる配線パターンの形成についても検討を行い、より一層の小型化について一助となるデータの積み重ねを行う。 また、これまで検討してきた小型エアタービンの回転機構や設計方法、効率的な磁気回路形状について成果をまとめる。得た成果を学会発表や展示会といった対外的な部分で発表を行う。これにより、シリコンを基本とした微細加工技術であるMEMS工程と、セラミック材料を基本とした小型電子素子作製技術である積層セラミック技術を組み合わせる有用性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において加工時の消耗品の消費が予定よりも少なかったため差額が生じた。次年度使用額については学会参加費や論文・図書等の英文校正に用いる。
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