小売店舗で商品の価格情報を表示する電子棚札(Electronic Shelf Label,ESL)など複数小電力デバイスを電池レスにするために,数十kHzの高周波磁気共振ワイヤレス電力伝送方式が提案されている。しかし,高周波電磁界の漏れ問題やコストの面で実用に至っていない。研究代表者は実現困難と思われる低周波の50/60Hz電磁誘導式ワイヤレス給電技術を用いた複数小電力デバイスの給電に適したユニークな給電装置を提案した。これにより高周波電磁漏れ問題がなくなり,ローコストで実用化が可能となる。より大電力と安定した電力供給が実現可能な電子棚札システム用ワイヤレス給電技術の開発及び実用化することを目的とした。 H28年度では,提案構造を用いた大きい受電電力のワイヤレス給電装置の製作であり,各受電コイルの出力電力が300mW以上を目標にして,原理機の設計および試作評価を行った。二次検証実験では,受電コイルにコンデンサで共振させて,受電電力は最大350mWになり,カラー液晶ESL駆動の目標に満足した。提案構造の有効性を実証した。しかし,受電電力は受電コイルの数量や位置によって大きく変動する課題があった。 H29年度では,その課題に対して,受電電力を平均化させる手法として,「切り替え制御」を提案した。従来法では,出力の変動率が30.4%に対して,切り替え制御を適用した場合は5.6%まで下げた。提案法の有用性を確認できた。また,より安定的に液晶ESLを駆動するため,受電側が380mW以上の電力が出力できる100Hz駆動の構造も設計,試作した。その結果,6個のESLを装着して,最大出力が500mW,平均で約400mWの電力が出力できた。これらの成果を用いて,今後,実用化の検討を行っていきたい
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