研究課題/領域番号 |
16K18059
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今岡 淳 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (60772019)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 結合インダクタ / 放熱性能 / 磁性材料 / 構造設計 / 信頼性設計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は車載用をはじめとするモータ駆動用電力変換システム内のDC/DCコンバータを高電力密度化・高効率化を図ることである。その方法としては、多相並列化させたコンバータ内において, 複数必要となる磁気デバイス(インダクタ・トランス)の小型軽量化に有効な“統合磁気デバイス”を実装まで含めて高性能化をさせることである。具体的な課題はそれぞれ以下の通りに分類される。 (1)実用性を考慮して信頼性を向上させる磁気設計手法の確立 (2)放熱性能が高い統合磁気デバイス構造の開発 (3)特殊形状のインダクタの三次元回路実装を含めた実証的評価 本年度では、項目(1)に対して具体的な検討を実施した。その内容としては、統合磁気部品を実用化する際に問題となる直流偏磁に対する対策を立案し、統合磁気部品の特徴である小型軽量な性能をほとんど劣化させること無く、信頼性を向上させることである。この取り組みについては、磁気回路を活用した設計理論の確立はもちろんのことシミュレーション・実機での実証評価まで実施し、妥当性を確認済みである。さらに、その設計方法の発展版として、広い負荷領域で高効率駆動を実現するため、負荷範囲に対応させる形で並列化させた変換器の駆動相数を変更する電力変換器に対する統合磁気部品の設計技術も確立した。これにより、磁気部品の小型軽量化に加え、広い負荷範囲で高効率駆動化が実現可能となった。また、磁性材料の選択の位置づけから高飽和磁束密度・高温対応が可能なダスト系コア材が注目されている。ダストコアはギャップ付きインダクタとは異なり、直流電流に応じて非線形にインダクタンスが変化する。これに対し、材料特性をモデリングし、設計およびシミュレーション回路へ実装する手法も提案した。今後はこれらの材料特性も考慮しつつ、構造による放熱性能向上や小型化性能を高める技術を総合的に立案・評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、研究実績の概要でも示したように磁気回路ベースでの設計理論構築および実証評価まで実施した。従って、当初の予定の通りに研究が遂行されている。また。磁気デバイスの放熱性能を上げるためには、低熱抵抗構造の立案はもちろんのことであるが、回路の駆動周波数や電流・電圧の状態に応じて、適切な磁性材料の選択することによっても、発生する熱源そのものを小さくできることから過度な発熱は抑制できる。そこで、本年度では当初の計画には無かったが、非線形性の強い磁性材料のモデリングや設計技術についても取り組むことができた。今後は材料特性の内容も加え、総合的に磁気部品の体格低減やそれに耐えうる発熱抑制・信頼性向上を図る技術を確立する予定である。以上のことから、自己点検による評価では、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、磁気部品の信頼性向上設計手法および変換器全体を高効率化へ向けた制御と組み合わせた磁気設計を手法について検討を実施した。次年度は、これらの設計理論を活用しつつ、磁気回路と電磁界シミュレーションをベースとした高い放熱構造を有する磁気構造の立案を実施する予定である。現状において、放熱性能を向上させることが可能な構造設計理論は確立しており、今後、試作および実証的な評価を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、放熱性能を高めた新規構造の磁性体コアを金型から作成する予定であったが、材料特性および形状について検討する必要性やそれに付帯する損失の低減化手法等を吟味する必要性があるため、本年度では試作は実施せず使用額が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
放熱性能を高めたインダクタの構造設計・評価を引き続き進める。その上で、未使用額分を次年度のコア作成費用として使用する予定である。
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