本研究では 、人工衛星に用いる超小型・高効率絶縁電源システムの開発を目的とし、パワーSOCを実現する一環として、パワーSOCに適した数十MHzで動作する超小型DC-DCコンバータの回路技術について検討した。具体的には、本研究の要となる空芯インダクタの設計、試作・評価。次に、数十MHz駆動に適したゲート駆動回路の開発。非接触トランスを試作評価し、最後に電源を構築し評価した。また、LSIやMEMS技術によるパワーSoC作製の前段階として、PCBレベルでの検討を行なってた。空芯インダクタはHFSSによる電磁界シミュレーションを主にインダクタンス及び交流等価抵抗について詳細に議論し、試作インダクタの評価を行った。その結果、シミュレーションと実測の良好な一致が確認でき、それらのデータを基に回路シミュレーションモデルを作成した。また、ゲート駆動回路については、30-50MHzで動作可能な駆動ICの試作を行い、良好な動作特性を確認した。インダクタと同様に回路シミュレーションモデルを構築している。更に、非接触トランスを構築し電磁界シミュレーションによりその特性を確認した。非接触トランスを用いた絶縁型DC-DCコンバータの回路方式には電流共振を採用し特性評価を行った。プロトタイプ電源の効率評価を行った結果、変換効率が35%程度と高効率化が課題となった。損失分析を行った結果、トランス(インダクタ)での損失が全損失の70%を占めていることが明らかになった。電磁界シミュレーションにより損失原因が高周波化に伴う表皮・近接効果による交流抵抗の著しい増加であることが明らかになったため、トランスの設計を見直しパターン厚・幅の最適化を行った結果変換効率が55%まで改善した。今後、整流方式、スイッチング素子を変更することで80%程度の効率が達成できることをシミュレーションにより確認している。
|