平成29年度は(1)キャパシタ発熱と電流・電圧波形の関係の分析と,(2)キャパシタの加速劣化試験について検討した。 (1)キャパシタ発熱の電圧・電流波形依存性の関係の分析では,被測定キャパシタを絶縁性の溶液で満たした断熱容器に浸し,溶液の温度上昇率からキャパシタ損失を高精度に測定する手法を提案した。この手法と平成28年度に開発したインバータを用いて,高耐圧・大容量のフィルムキャパシタを実リプル電流条件下での損失測定可能な環境を整備した。1200 V耐圧フィルムキャパシタを用いた実験により,キャパシタ損失を1 W程度の分解能での測定できることを実証した。キャパシタ損失とインバータ動作条件の関係を実験的に検討し,キャパシタ損失はインバータ出力電流の実効値だけでなく,インバータのキャリア周波数に依存することを確認した。一方で,インバータ出力周波数に対する依存性は小さいことを確認した。 (2)キャパシタの加速劣化試験では,電解コンデンサを対象に高温条件下での劣化の直流バイアス依存性について試験を行った。室温と高温条件下でのキャパシタ劣化試験を比較することで,キャパシタ劣化の温度依存特性を確認した。キャパシタ劣化の指標である等価直列抵抗(ESR)の増加とキャパシタンスの低下では異なる特性を示し,電解コンデンサの劣化はESR・キャパシタンス値の双方のモニタリングが必要であることを突き止めた。以上の検討を前述の(1)キャパシタ発熱の電圧・電流波形依存性の関係の分析と組み合わせることで,実リプル電流流入に伴なうキャパシタ温度上昇時の寿命診断が実現できる。
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