本年度は,発光分光計測によるパルスアーク放電の発光スペクトルの取得およびパルスレーザーを用いたシャドウグラフ法による絶縁破壊後の状態の可視化を行った. 電子密度の評価を目的として,酸素原子の線スペクトルの広がりを媒質圧力を関数として調査したところ,ガス相と比較して超臨界相では広がりが大きくなることがわかった.これは超臨界相の方が電子密度が大きくなっていることを示唆する結果である.シュタルク広がりによって電子密度のオーダーを評価したところ,1立方センチメートルあたり10の17乗~18乗であったが,ファンデルワールス広がりは考慮できていないため,より正確な評価は今後の課題である.一方,シャドウグラフ法により絶縁破壊後を可視化したところ,衝撃波やアーク放電の加熱にともなう低密度領域および密度擾乱を観測することができた.低密度領域をガス相と超臨界相で比較すると,ガス相では密度擾乱が観測され,超臨界相では周辺の領域と境界がはっきりとした円筒状の低密度領域が観測された.マッハ数について比較したところ,ガス相では1.1~1.2程度となり,超臨界相では1.4程度の値となった.このマッハ数の傾向は,二酸化炭素の音速の特性が臨界点において極小値を示すことに起因するものであると考えられる.今後,衝撃波圧力などを測定することによって,衝撃波圧力の臨界点における特異性が見られるのかを調査していく予定である. 期間全体を通じて,パルスアーク放電のプラズマ温度,消費エネルギーの評価および放電発生後の低密度領域,衝撃波の観測行うことができ,目標としていた基礎特性を把握することができた.
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