研究課題/領域番号 |
16K18063
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
平山 斉 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (60560109)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リニアモータ / スイッチトリラクタンスモータ / 搬送 / DSP / インバータ |
研究実績の概要 |
省資源型で低コスト化が実現できるリニアスイッチトリラクタンスモータ(LSRM)を用いた,短ストロークから長ストロークの搬送まで同一の装置で担うことができる搬送用リニアモータの開発を目指している。本研究では,LSRMの詳細な基礎特性の解明および効率,出力を向上する駆動システムの開発を目的とする。そのために,シミュレーションと実験によりLSRMの静特性,動特性を明らかにし,従来の搬送用リニアモータと特性を比較することでLSRMの利点や課題を解明する。また,高効率,高出力な運転ができる新たな駆動システムの研究開発を行い,従来の駆動システムに対する優位性と課題を検証する。本年度はLSRM実験機の設計,試作,およびその基礎特性を実験により測定することを目的とした。得られた主な成果は以下のとおりである。 1、LSRM実験機の設計と作製:有限要素法解析を用いてLSRM実験機の設計を行った。実験で高速運転時の特性測定を可能とするためにモータの極ピッチを短くし,巻線を持たない二次側を固定子側に長く配置するよう工夫して解析を実施した。固定子長1m,定格速度1m/s,定格推力50Nをもつ実験機の設計を完了した。 2、実験システムの作製:実験機の駆動用に,可動子位置に応じた電流を一次巻線に供給するインバータを設計,作製し,さらにDSPを用いた制御システムを作成した。 3、有限要素法解析による特性評価:有限要素法解析により,LSRMを用いた物流搬送システムの推力,出力,損失,効率特性を算出し,従来の物流搬送用リニアモータと比較した。その結果,従来のリニアモータに比べて同等もしくはそれ以上の出力および効率を得るための設計法についての知見を得た。 4、シミュレーションモデルの構築:高効率,高出力な運転ができる駆動システムを解析的に検討するために,磁場解析と回路解析を連成したシミュレーションモデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(遅れている内容)1、LSRM実験機の設計と作製:有限要素法解析を用いてLSRM実験機の設計を実施しており,予定していた設計を完了した。しかし,実験機の作製に想定していた以上に時間がかかり,平成28年度中に納品できなかった。そのため,平成28年度に予定していた基礎特性の測定が当初計画よりも遅れた。以上ことが主な理由により,現在までの進捗状況を「やや遅れている」と判断した。 (順調に進展している内容)1、実験システムの作製:インバータシステムおよびDSP制御システムからなる駆動システムを作製し,LSRM実験機を駆動する準備は完了した。 2、解析による特性評価:有限要素法解析により,物流搬送装置用LSRMの解析を行い,リニア同期モータに比べ効率,出力は若干劣るが,従来のリニア誘導モータに比べ同体格で効率,出力が向上できること等を確認した。 3、シミュレーションモデルの構築:LSRM実験機の作製が遅れていることから,平成29年度の後半以降で実施することを予定している,磁場解析と回路解析を連成するシミュレーションモデルの構築を前倒しして開始した。 以上のように,平成28年度の研究計画のみでみた場合は「やや遅れている」と判断したが,3年間の研究計画期間全体で考えた場合は「おおむね順調に進展している」ともいえる。
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今後の研究の推進方策 |
LSRM実験機の作製が当初計画より少し遅れていることから,平成28年度に計画していた基礎特性の測定が進んでいない。しかし,LSRM実験機は平成29年度の4月上旬での納品が決まっており,また実験機を駆動するための装置や測定装置の準備も完了している。そのため,実験機を納品後ただちに測定に取り掛かることができ,計画の遅れを取り戻すことは十分に可能である。当初の計画では,平成29年度の前半でLSRMの特性測定実験を完了させる予定であるため,遅れている基礎特性の測定を含めて測定実施計画を整理しなおすことで対応する。なお,計画を変更するような課題も特になく,順調に進んでいる。従って,平成29年度では下記のようにおおむね当初の予定通り研究を進めていく。 1、実験による特性評価:LSRM実験機の基礎特性を測定し,平成29年度の前半で特性測定実験を完了させ,その特性を評価する。 2、高効率,高出力な運転を実現する駆動システムの検討:実験およびシミュレーションにより,LSRMを低速から高速運転領域に至るまで,高効率,高出力に駆動するための駆動システムについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の主な物品費は「LSRM実験機」で使用することを計画していた。しかし,実験機の作製に想定していた以上に時間がかかり,平成28年度中に納品ができなかった。そのため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年4月に納品される予定の「LSRM実験機」の費用にあてる。
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