2017年度は,2016年度に検討した結果をもとに,以下の検討を行い,それぞれ成果を得た。
(1)直流電源と負荷の組み合わせおよびバッテリーを想定した双方向の電源/負荷を3つ用いてそれぞれ接続し,直流マイクログリッドを想定した模擬電力ネットワーク実験装置を構築した。各ノードに,設計試作した3台の2レベルコンバータおよび3台の7レベルコンバータを用いた直流パワーフローコントローラをそれぞれ配置し,パワーフロー制御性能の比較を行った。出力スイッチング周波数を500kHzに統一した場合,パワーフローコントローラの出力レベル数を2レベルから7レベルにすることにより,同一の電流リプル条件で出力フィルタの時定数を5分の1に低減でき,出力電力の過渡応答を5倍速く出来ることが分かった。また,より実用的な比較条件として,スイッチング損失を揃えるため,出力スイッチング周波数を83.3kHzとした2レベルコンバータと500kHzとした7レベルコンバータを比較した。この条件では,7レベルコンバータは2レベルコンバータの28倍速い過渡応答を実現出来ることを実証した。
(2)フライングキャパシタリニアアンプ(FCLA)を単位モジュールの組み合わせにより実現する構成を提案し,最大で素子直列数4の単位モジュールを3台組み合わせた12直列FCLAを試作した。実験の結果,4直列FCLAで81.1%(理論効率83.4%),6直列FCLAで84.5%(理論効率86.8%),12直列FCLAで88.9%(理論効率91.7%)の測定効率を得た。従来のB級リニアアンプ(理論効率78.5%)に対して,FCLAの素子直列数を増やすことにより変換効率を改善できることを実証した。さらに素子数を増やすことにより,一般的なPWMインバータと同等の効率かつB級リニアアンプと同等の高速応答のコンバータが実現出来る可能性を示した。
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