モバイル・ウェアラブル機器への無線給電における次世代の主力方式として、電磁波方式より安全で電磁誘導方式より給電範囲が広い、磁界共振結合方式の無線給電が期待されているが、現状ではアンテナを始めとした無線給電機器の要素は剛体が前提であり、組み込み先の柔軟性が失われるため、日常生活での用途が制限されている問題があった。 そこで本研究では、フレキシブルアンテナを用いた磁界共振結合方式の無線給電技術の確立を目的とし、そのための必須要素である共振補償機能およびリアクタンス変化を抑えたアンテナの実現方法を明らかにすると共に、実際に給電システムを構築して給電効率測定などを行うことで有用性を確認する事とした。 昨年度までにソフトスイッチングによる低消費電力での共振補償に関して、簡易実験を通して実現可能性を示す事には成功していた。しかし、スイッチング時の突入電流や基準波の正弦波からの波形崩れといった問題が発生しており、効率向上にはこれらの原因究明と解消が求められていた。そこで、本年度はこれらの原因がスイッチング遅れおよびON抵抗にある事を理論解析で見出し、実機において原因を取り除く事に成功した。さらに、磁界解析ソフトであるJMAG上で様々な形状のコイルを構成し、リアクタンス変化の特性を導出した。その結果、セグメント化を行うことがリアクタンス変化の抑制に一定の効果をもたらす事が確認された。最後に、シミュレーションを通して、インダクタンス変化を伴う無線給電システムの制御系設計に取り組んだ。無線給電システムの実験機を構築しての実証実験までは達成できなかったが、研究期間を通して、今後の研究に向けた足がかりとなる回路システムの基本特性や制御系の設計論については明確にする事ができた。
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