研究課題/領域番号 |
16K18072
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
本田 純一 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 電子航法研究所, 研究員 (10643348)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 航空機監視 / 電子航法 / 電波伝搬 / レイトレーシング法 / 信号数 / ハイブリッド計算 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電磁界解析手法を組み合わせたハイブリッド簡易計算手法を開発し、航空分野の各種電波問題へ応用することにある。二年目は、初年度に開発した一部のプログラミングについて性能を評価するために、関連研究の動向調査と当所で所有する他のソフトとの比較を行った。 初年度に簡易レイトレーシング法(RTM)のプログラミングを行い、計器着陸システムの電波干渉への応用を試みた。そこでは、複雑な地面からの散乱波を計算に組み込んだが、これまでの国内の本システムにおける解析は二次元地面に限定されており、調査したところ諸外国の関連ソフトでも二次元解析にとどまっているようであった。当該装置のアンテナ前方については通常障害物がないことが前提となっているため解析対象の制限は当然のことかもしれないが、日本特有の設置環境を鑑みると必ずしも二次元解析で精度が取れるとも考えにくい。そこで、開発したプログラムで得られた結果と国内外の解析結果の比較を開始し、性能比較を進めた。最終的な判断はこれからになるが、同じ環境で計算結果が概ね一致するのであれば、申請者が開発したプログラムの三次元への応用も可能であろうと考えている。評価したプログラムについては、計器着陸システムのローカラーザーおよびグライドスロープへの適用を目標としている。 その他の解析手法については、初年度に開発したFDTD法および新たに物理光学近似(PO法)に基づいたプログラミングを進めており、今後、RTMのアルゴリズムをベースに解析手法の組み合わせを進めていく予定である。また、空港内のVHF帯の信号強度の測定も実施した。安定した信号の取得を図る必要があることから、測定方法や測定場所の再選定が必要との判断となり、最終年度に再試験を実施する予定である。レーダに利用する周波数帯については、既存システムを利用して信号数の推移について評価をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に開発したプログラムの一部について性能評価を実施した。RTMの三次元地面モデルへの応用であるが、航空における当該研究分野では二次元地面への適用が大多数であるため、二次元地面を対象として精度の比較を進めた。現存するソフトの解析の特徴もあるため、継続して評価しているところではあるが、同様の結果であると判断できた場合には、申請者の提案手法の三次元への適用もおおむね良好ではないかと考えている。初年度の開発、二年目の性能検証という手順から考えると概ね予定通りに研究は進められている。しかし、その他のFDTD法およびPO法についてはプログラムに改良の余地があるため、評価は保留としているところである。 実験については、当研究所の機材を活用することで目的とする実験の目途がたったことから、空港内で試験を行った。試験方法等の見直しは必要ではあるが、今後、空港内の伝搬環境の調査と得られた結果をもって計算値の評価を進めることができるようになる。その他、レーダの周波数帯については、他の研究で利用している受信機を用いて空港内複数個所で同時刻に取得した信号を解析し、空港内の受信状況について取りまとめた。これによりマルチパス発生個所等が絞りこめるようになり、計算手法を評価する際に役に立つと考えている。 以上のことから、概ね計画通りではあるが、プログラミングにやや遅れが見られるため、研究の進捗としてはやや遅れていると判断した。ただし、すでに評価も進めているため、最終年度後半においてこれらの遅れを取り戻すような作業計画を考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したプログラムの性能評価を継続し、その後、各種航空分野の電波問題への応用を行う予定である。当初はモーメント法も開発対象の候補であったが、当研究成果の当該分野での利用を考えた場合に、計算機メモリや計算時間の観点から、かなり精密な精度を求めない限りは、使い勝手のよいツールとしては組み合わせるのは難しいとの判断をした。そこで、基本はRTMによる解析として、解析対象によってはPOやFDTDを利用する方向にしたいと考えている。送受信間の電波の航跡の探索については簡易RTMによって行われ、例えば建物や機体の解析等で優位点がある場合には、要所によってPO法を組み合わせることをまずは開発の方針とする。多少精密な計算が必要となる場合には、一部空間においてFDTD法の適用も検討中である。 開発したプログラムの性能については、国内外の航空分野のソフトと比較を行うことによって評価を進める。また同時に空港内のマルチパス状況を含めて、研究所内の資産を上手く活用することにより実験を行い、対象とする周波数帯の電波の振る舞いについて取りまとめ、一部の結果は開発したプログラムの性能評価にも利用する方針である。得られた成果は国内外の学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 初年度に計器着陸システムの信号の実験のために測定器を購入予定であったが、職場内の装置を組み合わせることで同様の測定ができることが確認できたため、測定器の購入については取りやめた。その分、他の測定や計算器補用品について拡充を図るようにした。旅費については、国内の国際学会への参加などもあり、当初予定した額よりも節約して進めることができている。以上の理由により、実験関連の予算と旅費が次年度へ繰り越しとなった。 (使用計画) 前述のように測定器の購入については取りやめたが、その分、他の実験機材やPC補用品の拡充を図るように予算を使用する。また、最終年度となり成果の公表にも積極的に努めるため、余った旅費等についても学会発表の参加費等への利用を踏まえて最終年度に繰り越すこととする。
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