本研究の目的は、電磁界解析手法を組み合わせたハイブリッド簡易計算手法を開発し、航空分野の各種電波問題へ応用することにある。最終年度は、これまで開発したプログラムの改良・拡張および計器着陸装置(ILS)への応用を行った。 基本的なプログラムの構造は、航空分野への適用を念頭に広域の計算を可能とするためレイトレーシング法をベースに、その上に物理工学近似や一様幾何光学回折理論を応用する形とした。主目的である汎用コンピュータでの利用を考えた場合に、やはりコンピュータメモリの消費および計算時間の増大が観点となり、極力メモリの消費を抑えることができ、かつ可能な範囲で大きな散乱体への応用が可能なように上記手法を第一実装方法として検討した。ポイントは障害物となる建物や航空機、地面のモデル化は三次元で行えることを念頭に、複数の障害物を同時に扱うことのできるアルゴリズムとしたことである。 開発したアルゴリズムをこれまでと同様にILSに応用した。機体に空港までの着陸経路上において水平方向の誤差を示すローカライザー(LOC)と垂直方向の誤差を示すグライドスロープ(GS)の電波干渉問題について、上記の障害物件を考慮した解析を行えるように実装した。ここで開発したアルゴリズムは、所属組織で進めている各種電波問題の解析に応用を試みた。見通し内外判定や偏波面、受信アンテナ特性、高次散乱波等を考慮できるようにしており,国内のILSソフトでは対応できない環境に適用できるように開発を行った。 また伝搬特性を調査するために、実空港でのLOC信号測定、電波無響室でのバイスタティックレーダ断面積の測定、空港面監視システムの信号検出率等の実験を行い、航空分野における電波の振る舞いについて解析を行った。特にLOCの信号測定の結果と開発した数値シミュレーションによる比較では干渉領域の傾向がほぼ一致する結果を得ることができた。
|