研究課題
強相関電子系における金属-絶縁体転移を電子デバイスに応用する試みが近年盛んとなっており、材料の電気抵抗変化を利用した抵抗変化メモリ素子等への応用について活発な検討がなされている。一方で従来報告されている金属-絶縁体転移材料では、材料内の温度変化により転移が駆動されるために、動作制御性や集積性の低さが課題となっていた。この問題を解決するため本研究では、近年実験的に見出された新現象である電場誘起型の金属-絶縁体転移に着目し、電場誘起型の金属-絶縁体転移材料であるCa2RuO4のエピタキシャル薄膜成長とデバイス構造の作製、及び電気特性評価を通じて、金属-絶縁体転移を利用した新原理の抵抗変化メモリ素子の創出を目指し研究を行った。Ca2RuO4では従来、真空製膜法の一種であるパルスレーザー堆積法による製膜が行われてきたが、製膜時に膜中にRu欠損が容易に形成されてしまうという問題が有った。この事から本研究ではCa2RuO4薄膜の製膜法として新たに、大気圧下での薄膜成長が可能な固相エピタキシャル成長法を採用し、良質なエピタキシャル薄膜の作製を試みた。固相エピタキシャル成長における各種成長条件を最適化させた結果、従来報告の無かったCa2RuO4の単結晶エピタキシャル膜の作製に成功し、さらには作製した膜の抵抗率測定において金属-絶縁体転移の発現を示唆する振る舞いの観測にも成功した。また計画最終年度には作製したエピタキシャル膜上への微細電極作製を実施し、T > 50 Kの条件下において電圧印加による抵抗変化動作の誘起に成功した。これらの結果はCa2RuO4の金属-絶縁体転移のエピタキシャル薄膜における初の明確な観測例であり、電場誘起型金属-絶縁体転移の物理機構解明に向けて重要な知見を与えるとともに、新原理抵抗変化デバイスとしての応用可能性を強く示唆する。
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