研究課題
炭化ケイ素(SiC)は、その優れた物性からパワーデバイス半導体として近年注目を集めており、実際にすでにSiCパワーデバイスは市場に出回り始めている。SiCには、自然酸化膜としてSiO2を持ち、SiC-MOSFET(電界効果トランジスタ)の絶縁膜として利用できるという利点がある。しかし、現在のSiC-MOSFETでは、SiC/SiO2界面に高密度に存在する高密度欠陥準位の存在によりデバイス特性が理論性能値のたかだか10%未満しか出ていない。SiCデバイスの更なる普及、信頼性獲得のためにはSiC/SiO2界面欠陥の理解と、それらのデバイスへの影響を理解する必要がある。SiC/SiO2界面欠陥は必ずしもネガティブな側面ばかりではなく、新たな物理現象の舞台でもあることが最近明らかになって来た。SiC/SiO2界面の欠陥が単一光子光源として振舞うことが報告された。この界面の単一光子光源の正体を明らかにすることも、実応用に向けて重要な課題となっている。今年度はSiC/SiO2界面近傍の炭素関連欠陥の網羅的な絞り込みと、それらの電子状態解明を進めた。昨年度の実験との共同研究により、界面には炭素関連欠陥が大量に存在する可能性が示唆されたが、その微視的形態に関しては依然未解明であった。本研究では、CPMD(カーパリネロ分子動力学法)用いたsimulated annealing法により、炭素関連欠陥の網羅的な探索を行なった。その結果、界面の酸素分圧に依存して、炭素関連欠陥の形態が大きく変わることを示した。特に、酸素分圧が小さい時に、炭素の凝集体の存在が示唆された。本年度は、SiC/SiO2界面の欠陥と単一光子光源の発光波長との関係も調べた。SiO2のアモルファス構造に由来し、局所的な構造の違いが単一光子光源の発光波長に影響し、発光波長にばらつきが出ることを明らかにした。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件)
Physical Review Materials
巻: 2 ページ: 010801~010806
https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.2.010801
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 87 ページ: 024701~024701
https://doi.org/10.7566/JPSJ.87.024701
巻: 86 ページ: 054702~054702
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.054702
Journal of Non-Crystalline Solids
巻: 473 ページ: 64~73
https://doi.org/10.1016/j.jnoncrysol.2017.07.031
Nano Letters
巻: 17 ページ: 6458~6463
10.1021/acs.nanolett.7b03490
巻: 86 ページ: 124717~124717
https://doi.org/10.7566/JPSJ.86.124717