平成30年度の研究課題は、GaN/絶縁膜界面に存在する深い準位の起源解明に関するものである。平成30年度において、GaNキャパシタを作製し、その界面における深い準位の測定を行った。GaN表面にO3ガスを曝露することによって表面に酸化層を形成し、界面準位の低減を試みた。加えて、原子層堆積法を用いた絶縁膜において、酸素欠損が深い準位に成り得る可能性があり、酸素欠損を終端する目的で不純物を絶縁膜中に導入することで、更なる界面準位の低減を試みた。試料作製プロセスに関しては、用いた基板はHVPE法を用いて成長させたn型GaN基板であり、MOVPE法を用いて実効ドナー濃度5E+16cm^-3程度のn型エピ層を成長させた。ウエハをRCA洗浄後、原子層堆積法(ALD法)を用いてAl2O3膜を50nm堆積させ、ゲート電極(Ni/Au)および裏面電極(Al)を蒸着し、GaN-MISキャパシタを作製した。O3曝露試料に関しては、ALD-Al2O3堆積前にUV-1を用いてオゾン曝露を行い、酸化層を形成した。不純物導入の実験に関しては、ALD中にホウ素原料を導入した。電気特性を評価した結果、オゾン曝露を行った試料に関しては、伝導帯下端から1eV程度のエネルギー領域において、界面準位密度が11乗から10乗台程度の低界面準位密度を達成することが出来た。O3曝露によって酸化層が形成され、GaOx/GaN界面が良好な界面特性を示すことが明らかになった。この成果は、ISGN-7(2018年8月9日、ワルシャワ)にて報告した。一方、ホウ素ドーピングを行った結果、ALD中に置いてTMAおよびホウ素原料のサイクル数を変化させることにより、Al2O3膜中におけるホウ素濃度を制御可能であることがSIMS測定から明らかになった。ホウ素導入行うことで、高電界印加時におけるリーク電流およびフラットバンド電圧の抑制を達成した。
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