• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

ナノワイヤにおけるフォノン熱輸送とひずみの関係の原子論的解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K18082
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

服部 淳一  国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究員 (80636738)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードフォノン / 熱輸送 / ひずみ / 応力 / ナノワイヤ
研究実績の概要

今年度は、本研究の目指すところであるナノワイヤにおけるフォノン熱輸送とひずみの関係解明に向けて、無限長ナノワイヤを対象に一様ひずみの影響を調べるべく研究を進めた。しかし、誌上発表や学会発表などの対外発表に至るまでの成果は得ることができなかった。
具体的な取り組みとしては、動径方向のひずみが加わったナノワイヤの原子モデルを生成するために、そのようなひずみを印加する方法として、ナノワイヤの外部に仮想的な原子を配置するアプローチについて検討した。このアプローチの成否は、ナノワイヤの変形が進展した状況でも構成原子の位置が安定するように、それらの仮想原子を配置できるかどうかにかかっている。しかし、ナノワイヤにおける元々の原子配置が高い対称性を有する場合を除いて、そのように仮想原子を配置することは容易でないことが分かった。この事実は、本研究の実施計画に大幅な修正をもたらすものであるが、重要な知見でもある。
また、フォノン分散関係から熱輸送性能を評価する方法に対し、数値計算の結果として生じる望ましくない形状を有する分散曲線についても、問題なく扱えるように改良を施した。この熱輸送性能の評価方法を用いて波付きシリコン・ナノワイヤにおけるフォノン熱輸送を調べた成果は、論文誌「Journal of Applied Physics」および国内学会「第77回応用物理学会秋季学術講演会」にて発表することができた。これらは本研究の成果の一部と考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は、無限長ナノワイヤを対象に一様ひずみ、特に、動径方向のひずみの影響を調べる計画であったが、ひずみナノワイヤの原子モデルの生成という最初の段階でつまづき、当初の目標を達成できなかった。
次年度は、有限長ナノワイヤを対象に同様の解析を進める予定であるが、その過程で必要となる非平衡グリーン関数法に基づく熱輸送能力の評価法について、研究協力を依頼していた大阪大学の森伸也教授よりご指導いただく機会に恵まれ、事前に準備を進められたことは幸いであった。
以上のことから、全体としては進捗はやや遅れていると考える。

今後の研究の推進方策

次年度は、懸案である動径方向のひずみの加わったナノワイヤの原子モデルを生成する方法として、今年度検討したナノワイヤの外側に仮想的な原子を配置するアプローチに代えて、所望の応力を誘起するポテンシャルを用いるより簡便なアプローチについて検討する。これによって原子モデルの生成に成功した場合には、今年度実施する計画であった無限長ナノワイヤにおけるフォノン熱輸送に与える一様ひずみの影響の解析に進む。
また、並行して非平衡グリーン関数法に基づく熱輸送能力評価法を計算プログラムに実装し、すでに原子モデルの生成法が確立している軸方向のひずみについて、有限長ナノワイヤにおけるフォノン熱輸送に与える影響を調べる予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度未使用分は、当初の計画では、研究遂行に必要となる計算機サーバおよびソフトウェアの購入に充当する予定であった。しかし、研究の進度が遅く、これらを必要とする段階に至らなかったため、今年度の購入は見送ることにした。

次年度使用額の使用計画

助成金のうち次年度繰り越し分については、当初の計画どおり、研究遂行に必要となる計算機サーバおよびソフトウェアの購入に充てる。
次年度配賦分については、主に、情報収集および成果発表を目的とした国内外の学会に参加するための旅費、また、機関外の研究者との打ち合わせを行うための旅費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Corrugated Si nanowires with reduced thermal conductivity for wide-temperature-range thermoelectricity2016

    • 著者名/発表者名
      Vladimir Poborchii, Yukinori Morita, Junichi Hattori, Tetsuya Tada, and Pavel I. Geshev
    • 雑誌名

      Journal of Applied Physics

      巻: 120 ページ: 154304

    • DOI

      10.1063/1.4965302

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] シリコン量子細線における音響フォノンによる弾道的熱輸送に与える波付け加工の影響2016

    • 著者名/発表者名
      服部 淳一、ウラジーミル ポボルチー、多田 哲也
    • 学会等名
      第77回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2016-09-15 – 2016-09-15

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi