研究課題/領域番号 |
16K18085
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 正治 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (40740147)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | IoT / 低消費電力 / 強誘電性 / HfO2 / 不揮発性メモリ |
研究実績の概要 |
本研究ではIoT向けセンサノードデバイスにおける集積回路の非連続的な超低消費電力化に向けたデバイス・回路技術の研究開発を行っている。特にCMOS技術と整合性のある強誘電性HfO2を用いたロジック・メモリデバイスの設計・試作・実証を行う。 本年度の研究業績は以下の通りである。 (1)強誘電性HfO2ゲート絶縁膜を用いた負性容量トランジスタ(NCFET)の設計:ナノワイヤ型NCFETのモデリングに成功し、ゲート長とナノワイヤピッチの設計制約の下、エネルギー効率の指標となる電流オンオフ比がフィンFET型NCFETに比べて2倍程度大きくなることを示した。また過渡特性とモデリングにより強誘電性HfO2のNCFETの動作速度について初めて実験的に調査を行い、1-10MHzの領域でヒステリシスを抑えた動作が可能であることを示した。 (2)トランジスタの待機時リーク電流に対するMCU消費電力のベンチマーク:IoTデバイスにおいてはアクティブ率の低い間欠動作が主となることを考慮し、ロジックトランジスタ・メモリセルの待機時リーク電流とMCUの消費電力について調査した。1MHz動作で1mWの消費電力を目指すためには待機時リーク電流を10pA/セルまで抑制することが必要であることを明らかにした。 (3)強誘電性HfO2キャパシタを集積した不揮発性SRAMの試作・実証:(2)の結果を鑑みて、IoTデバイスで最重要なデバイスは不揮発なワーキングメモリであると結論づけ、CMOSプロセスと整合性の高い強誘電性HfO2キャパシタを集積した不揮発性SRAMの設計・試作を行い、電源オフ時前にデータをストアし、電源回復時にデータをリストアする動作を実証した。これにより待機時リーク電流を限りなくゼロに近づけることが可能となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究計画項目について、その進捗状況を説明する。 (1) NCFET/FeFETのコンパクトモデリング・パラメータの抽出:NCFET/FeFETのコンパクトモデリングについてはフィン型、ナノワイヤ型まで拡張しており順調に進んでいる。 (2) NCFET/FeFETの回路設計と従来MOS回路との比較・ベンチマーク:待機時オフ電流に注目したNCFET/FeFETと従来MOSFET回路のマクロ的なベンチマークを行うことに成功し、順調に進んでいる。 (3) セルレベルでのFeRAM回路の設計・試作・実証:(2)の知見に基づき、不揮発性SRAMの重要性を認識、今年度強誘電性HfO2キャパシタを集積した不揮発性SRAMのプロトタイピングに成功し機能性を実証した。そのため、前倒しで進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
各研究計画項目について、その推進方策を説明する。 (1) NCFET/FeFETのコンパクトモデリング・パラメータの抽出:昨年度の過渡特性のモデリングでは強誘電性HfO2がシングルドメインであると仮定していたが、精度の高いモデリングにはシングルドメインでは限界があることを認識した。そこで今年度は強誘電性HfO2についてマルチドメインモデルを導入して、NCFETおよびメモリセルの動作速度を正確に見積もる。 (2) NCFET/FeFETの回路設計と従来MOS回路との比較・ベンチマーク:(1)で述べたように、マルチドメインモデルを導入してNCFETのモデルを刷新するので、この新しいモデルに基づき改めて回路性能のベンチマークを行う。 (3) セルレベルでのFeRAM回路の設計・試作・実証:昨年度実証した不揮発性SRAMは強誘電性HfO2キャパシタを用いた回路である。今年度は現在プロセス開発を進めているNCFETを試作しその回路設計・実証を目指す。
|