研究課題/領域番号 |
16K18098
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
渥美 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究員 (30738068)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シリコンフォトニクス / 液晶 / 配向制御 |
研究実績の概要 |
シリコン光集積システムの高度化に向け、低消費電力かつ広帯域な光位相シフタの開発が求められている。我々はこれまで、異種材料集積シリコンフォトニクスとして、大きな分子異方性を有し、かつ電界による配向制御が可能である液晶材料を、シリコン導波路上に集積した光位相制御素子の開発を進めてきた。その中で、液晶分子の初期配向状態は、素子の応答速度や位相変化量、駆動電圧を決定する重要な要因であることが分かっている。そこで本研究では、シリコン導波路の周りにナノ寸法の溝配列を形成することで、液晶分子の初期配向を局所的に制御可能とする技術の開発を行う。 本年度は、CMOS互換の半導体加工プロセスを用いてシリコン、石英基板上に100~300nm程度の幅の溝配列をエッチング形成し、偏光顕微鏡を通じて液晶配向能力の検証を行った。さらに、光パススイッチ素子の一つである方向性結合器に本技術を導入し、溝配列の方向に応じた駆動電圧の変化を測定した。具体的には、まず透過近赤外光を用いた偏光顕微鏡を構成し、基板上での液晶配向状態の観察系を立ち上げた。その際、相転移温度以上での観察を通じて、周期溝構造での光回折による偏光回転が生じていないことを確認し、観察システムの信頼性を得た。次に、シリコン方向性結合器まわりに様々な方向の溝配列(200nm幅)を形成し、スイッチング動作の駆動電圧依存性を測定評価した。上述した偏光顕微鏡観察を通じて溝配列に沿って液晶分子が配向していることを確認した。また同時に導波路方向に対し垂直方向に近い溝配列であるほど低駆動電圧となる結果を得た。これは、溝に沿って配向した液晶分子が導波路側壁近辺の液晶分子配向にも影響を与えていることを示す。本技術は、従来の配向膜実装による初期配向制御法に比べて、局所導入可能かつ自由度が高いことから、チップ上で様々な機能を要するシリコン光集積回路への導入に向いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本技術の動作検証、及び機能デバイスへの導入評価を行い、良好な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、液晶配向能力の溝構造依存性評価を行うとともに、様々な機能デバイスへの技術導入を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の予算に計上していた偏光顕微鏡関連の設備備品費に関して、一部所有の備品で代替できたため。また、同じく計上していた国際学会での成果報告が、来年度開催であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰り越し分は、計画通り偏光顕微鏡の設備備品費として使用を予定している。また、すでに確定している国際学会成果発表の旅費として使用する。
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