液晶装荷シリコンフォトニクスは、高屈折率材料であるシリコンを導波路コアとした高密度集積性、及び液晶材料特有の大きな屈折率異方性を融合した異種材料集積デバイス技術であり、非常に小さいデバイス寸法での高効率な位相変調機能を実現する。このようなデバイスにおいて、より高効率な位相変調を実現するためには液晶分子の初期配向を精細に制御する必要があり、本研究ではシリコン導波路の周りに様々な方位のナノ溝構造を形成し液晶配向を誘引することで、導波路周りの液晶初期配向を局所的に制御可能な技術の開発に取り組んでいる。 本年度は、昨年実証した垂直電界駆動型(VA型)のマッハツェンダー光スイッチに続き、平面電界駆動型(IPS型)のマッハツェンダー光スイッチを開発した。シリコン基板側での電極形成は導波路との混線が課題となる。そこで今回、液晶封止に用いられる天板側(ガラス基板)に配線を形成することで導波路層と電気配線層を分離し、レイアウト自由度の高いデバイスを実現した。液晶の初期配向を指示するナノ溝構造は導波路と並行方向に形成し、電極配置は電界が導波路に対して直交するように位置合わせ貼り付けを行った。偏光顕微鏡観察を通じて電界印加/非印加切り替えでの配向回転を確認した。作製したデバイスは、波長1560.3 nm において印加電圧5.2Vでスイッチング動作を示し、立ち上がり、立ち下がり時間はそれぞれ9.6、12.4msecと比較的良好な時間応答を得た。本デバイス実証を通じて、VA型、IPA型といった基本的な液晶駆動方式での局所配向技術の有効性を明らかにするとともに、様々なアプリケーション応用への道筋を立てることができた。
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