研究課題/領域番号 |
16K18099
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
吉澤 真吾 北見工業大学, 工学部, 准教授 (20447080)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水中音響通信 / OFDM / ドップラーシフト / リサンプリング |
研究実績の概要 |
水中音響通信は自律型無人潜水機(AUV)や遠隔操作無人探査機(ROV)のデータ収集や遠隔制御などに利用される。水中音響通信の性能はマルチパスやドップラーシフトに影響されるため、安定した通信を実現するにはこれらの対策が不可欠である。最近の水中音響通信では周波数利用効率の高い直交周波数分割多重方式(OFDM)が利用されている。OFDMはマルチパスに対して強いが、ドップラーシフトが発生しているときはスペクトラムが隣接する信号どうしが干渉し、OFDMの復調精度が劣化する問題がある。従来のドップラーシフト対策ではドップラーシフト量に応じて受信信号を時間伸縮させて元の信号に戻すリサンプリングによる補償処理を行う。ただし、ドップラーシフトばらつきや時間変動の影響を受けて補償性能が低下する問題があった。
本研究ではドップラーシフトばらつきを考慮したドップラーシフト推定や補償法について新しい手法を提案し、その有効性を実海域試験で検証している。平成28年度は並列リサンプリング方式を提案し、従来法よりもビット誤り率が0となる通信フレームが2倍以上となることを確認した。平成29年度は通信装置が加速運動や不規則運動したときのドップラーシフトばらつきが大きい条件下での通信試験評価を行った。また、安定したドップラーシフト推定を実現すためにOFDMサブキャリアの一部を既知信号とし、周波数領域でドップラーシフト量を測定する方式に変更した。実海域試験は北海道紋別市港湾と沖縄県石垣市周辺海域で実施し、送波器を船で牽引してドップラーシフトを発生させた状態で通信試験を行った。上述のドップラーシフト補償法と周波数領域オーバーサンプリング手法を併用したときの通信特性を評価し、船が蛇行運動する場合でも多くの通信フレームでビット誤り率が0となることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りにドップラーシフト対策技術の検討および実海域での実証試験を実施することができている。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションでの検証を行うための音波伝搬路モデルリングについて取り組み、実海域試験とシミュレーション評価結果との比較を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では水中音響通信試験装置の構築において増幅器や高性能ハイドロフォンを購入する予定であったが、予算が不足していることが判明し、増幅器やハイドロフォン購入を見合わせて現行装置で対応することにした。次年度は海域試験を2回実施し、その海域試験の旅費や試験準備の消耗品費に充てる予定である。
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