本研究では,セシウム原子を用いた光学式磁界センサをkHz帯の交流磁界検出に適用することで,非侵襲(電磁界を乱さない),高感度(微量でも計測できる),高空間分解能(局所的な磁界も検出できる)といった特徴を有する測定システムの開発を目的とする. 本センサの特性上,静磁界を印加する必要があるため,静磁界印加用コイルをプローブ内に取り付ける必要があり,このコイルがプローブの大型化や金属両の増加を招いてしまう.そこで,静磁界印加用として小型の永久磁石を用い,コイルとの比較を実施した.コイルを用いた場合には,セル内における磁界強度は一様に分布しているが,永久磁石を用いた場合には約5%の空間的な不均一が生じた.この不均一によって信号強度の減衰や感度帯域幅の広がりが生じることを確認した. 次に,微小領域における交流磁界の空間評価を実施するため,デジタルミラーデバイス(DMD)を用いた測定を実施した.測定において,ミラー面を50×50の画素要素領域に分割することで,10 mm×10 mmのガラスセル内をサブミリメートルの分解能で画像化した.測定対象信号として,ヘルムホルツコイルからの空間的に一様な磁界と,金属線の周囲に生じる不均一な磁界の測定を実施し,それぞれにおいて画像化を行った.ヘルムホルツコイルからの均一な磁界分布を画像化でき,入力信号強度に対する出力信号強度の線形な変化が確認できた.また,金属線から生じる磁界分布の画像から強度の減衰曲線を取得し,理論曲線のフィッティングを行った.フィッティング結果から,信号源の位置推定を実施した.
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