本研究では経頭蓋磁気刺激法(TMS)において,導電性繊維を用いた磁場センサを用いて計測した磁場分布を特徴量とした刺激部位推定法を提案し,その有効性について評価した.これまでのTMSにおいては3次元カメラを用いた刺激部位推定システムが一般的に用いられてきたが,本申請課題で提案したシステムは3次元カメラを必要としないことを特徴とした. はじめにコンピュータシミュレーションにより,磁場分布によって逆問題的に刺激コイル位置が推定できることを示し,さらに生体を模擬したモデル実験により開発した磁場センサの有効性を示した.さらにモデル実験により,刺激コイルの角度を固定し自由度を減らした条件において,刺激コイルから発生する磁場により刺激コイルの位置推定および角度推定が可能であることがわかった.本手法においては,刺激コイルの角度および空間位置を同時に推定するには至らなかったが,磁場分布を特徴量として学習させるようなシステムを構築することができれば,角度・位置の同時推定も可能であることが示唆された.本研究で提案したシステムの妥当性の評価として生体計測実験も実施した.大脳皮質の第1次運動野の位置へTMSコイルを設置して,刺激コイルを回転させながら刺激を与えることにより角度依存的な運土誘発電位の特性を計測した.この特性にもとづき最適な刺激コイル角度を決定したうえで,我々の開発したシステムで刺激コイル角度の推定結果の妥当性について検証したところ10度以内の誤差で推定できることを示した.
|