研究課題/領域番号 |
16K18117
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中野 和也 千葉大学, フロンティア医工学センター, 特任助教 (80713833)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中心血圧 / 容積脈波 / 圧脈波 / ディジタルカラー動画像 |
研究実績の概要 |
RGBカメラに基づいた非接触に脈波を計測するシステムと臨床現場において使用されている非観血式中心血圧装置の1つであるSphygmoCor EXCEL(AtCor Medical社)を用いて,同時計測を行い,カメラで計測した容積脈波から抽出した波形の特徴情報とSphygmoCorで計測された圧脈波から得られた大動脈の情報(中心血圧,大動脈AIx等)との関係を調査した. 脈波とは心臓から全身に伝播する駆出波成分と血管中で反射された反射波成分の合成波である.特に反射波は,血圧や血管壁の力学的な特性との関係が指摘されている.そこで,カメラで取得した容積脈波を周波数解析したところ,心拍数に相当する1Hz付近の第1高調波以外にも,反射波成分を構成する第2 , 3高調波のピークも見られた.したがって,取得した容積脈波を第1高調波から第3高調波の成分までが収まる通過帯域でFFTバンドパスフィルタをかけたところ,反射成分を含んだ二峰性または三峰性の脈波を得ることができた. カメラで取得した容積脈波の脈拍数とSphygmoCorで取得した圧脈波の脈拍数との関係を調査したところ,非常に高い正の相関(r = 0.98)がみられた.次に,二峰性をもつ脈波の2つのピークからAIxを求めて,カメラとSphygmoCorとの結果で比較した.カメラで取得したAIxは手のひらの末梢血管のAIxを示し,SphygmoCorは大動脈におけるAIxを示している.この2つのAIxの間には正の相関(r = 0.5)が見られた.さらに,容積脈波の立ち上がり点からピークまでの時間Tに対する血液量の増大BVの比(BV/T)を求め, 上腕収縮期血圧(bSBP)と中心収縮期血圧(cSBP)の関係を調べた結果,どちらも正の相関はr = 0.6程度であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画のとおり進捗している.カメラによる容積脈波計測と非観血式中心血圧装置SphygmoCor EXCELによる計測を同時に行い,各計測の脈波の波形から情報を取得し,末梢と大動脈との間の関係を調査した.さらに,カメラを用いて計測した2点間の脈波伝播速度(cfPWV: carotid-femoral Pulse Wave Velocity)の評価も行っている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度へ向けての方策としては,まず被験者数を増やすことが挙げられる.さらに被験者の数を増やすと共に,多様性のある被験者,例えば年齢や性別の異なる被験者で実験を行うことが必要となる. また,血圧や大動脈のAIxなどを説明する変数として,より最適な脈波波形の特徴量がないかを検討する必要がある.脈波に対して2階微分した加速度脈波から抽出した特徴量を用いた先行研究も存在するので,参考にしつつ特徴量を決める.また,今回は被験者対して血圧の変化を促す運動などは行わず,日常的な血圧を複数回計測した結果であるため,血圧値の変化が小さい.したがって,通常より高いまたは低い血圧値の情報がないので,そのような情報の取得についても検討する.
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