研究課題/領域番号 |
16K18119
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
木津 良祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (40760294)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / AFM / 線幅 |
研究実績の概要 |
本研究では、AFMによる線幅計測の不確かさ低減に向けたAFM探針形状の絶対評価技術開発を行っている。本年度は主に次の2点を行った。①ラインパターンの線幅計測の不確かさ低減に向けた探針制御パラメータの最適化や線幅計測手法の改良を行った。②AFM測定中に起こる熱ドリフトに起因したAFM像の変形を補正する技術を開発した。 ①:2016年度から引き続き行ってきた探針位置制御の最適化の結果、垂直側壁を有するラインパターンの繰り返し走査において0.2 nm以下の高い探針位置制御の繰り返し性を示した。この結果やラインパターンの三次元形状計測結果、線幅算出方法を含む内容は論文発表を行った。ラインパターン形状計測結果にはAFM探針形状が畳み込まれるため実際よりも膨張した像が得られ、算出される線幅値は実際よりも大きな値になる。校正対象の測定の前後において、透過電子顕微鏡で校正された線幅標準試料を利用してその探針形状幅(膨張分の幅)を求めることで線幅値を補正した。 ②:AFM測定での熱ドリフトは、AFM探針―試料間の相対位置の変動のことであり、これはラインパターンAFM像や探針形状幅を求めるためのAFM像を変形させ、結果として線幅測定値の不確かさ増加につながる。測定環境の安定化では熱ドリフトの抑制に限界がある。そこで、熱ドリフト変位量をAFM像の補正に対して十分に高い時間分解能で求める手法を考案した。実験の結果、熱ドリフトをサブnmの精度で補正できることが示された。この技術によってAFM像の変形が補正できるようになったため、探針形状の膨張分の測定および校正対象の線幅測定が高精度化でき、線幅計測の不確かさ低減につながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にあった、カンチレバーのねじれ振動を利用した探針制御技術開発・探針形状絶対評価は、測定の最適化が難しく達成できていないが、AFM像にのった探針形状幅を補正するための方法を代替案として行った結果、比較的高い精度で補正できることがわかり、最終的な目的である線幅計測の不確かさ低減に有用であることがわかったため。また、さらなる不確かさ低減手法として、AFM像の熱ドリフト変形の補正手法を考案し、実験によりその有用性が実証できたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、耐摩耗性の高い探針を用いた測定によって、探針摩耗に起因した線幅計測の不確かさ低減に取り組む。また、これまでに開発してきた技術を用いた線幅計測における不確かさ評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に主に行った探針制御プログラムの開発、線幅算出方法の改良、熱ドリフト補正技術の開発では要した額が少なかったため次年度使用額が生じた。 次年度は耐摩耗性の高いAFM探針を数種類購入し、実験に必要となるそれらの加工を外注する。また、線幅計測の実験に要する標準試料を購入する。
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