研究課題/領域番号 |
16K18123
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
原 尚之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10508386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 浮体式洋上風車 / ブレードピッチ角制御 / 予見制御 |
研究実績の概要 |
ロバスト性を考慮した予見制御系を構成するための準備として,いくつかの準備課題に取り組んだ。風速の予見情報が制御性能をどの程度改善するかについては,予測制御において風速の予見情報を取り入れた制御系を構成しその性能を確認した。また,浮体式風車のスケール模型の数理モデルに対し,状態フィードバックH∞予見制御を導入し,風速の予見時間とH∞ノルムの関係を調べた。その結果,重み関数の選定の仕方に依存してゲインのピーク値の抑制の度合いが異なることがわかった。選び方によっては,予見時間を長くしてもH∞ノルムの改善には寄与しない場合もあるし,一方,適切な重みを選べばH∞ノルムが改善する場合もあることが確認された。現時点では,風速予見と同時にロバスト性を考慮する設計はできていないが,ロバスト性を考慮した設計をするための準備とし,H∞ループ整形設計法に基づき制御系を構成し,その性能をスケール模型を用いた実機実験で評価した。また,風に加え波も外乱項としてもつモデルの検討のため,システム同定法を利用し,両外乱を外乱項としてもつモデル構築についても検討した。個別ブレードピッチ角制御も用いる予定であるため,MBC変換を用い個別ピッチ角制御系を構成した。MBC変換を導入し個別ブレードピッチ角制御系を設計する場合,同時ピッチ角制御に比べ制御性能の調整が容易であること,また,ブレード翼根の荷重の低減に有用であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目以降に予定していた東京大学生産技術研究所の海洋工学水槽の実験について,水槽の他キャンパスへの移転があることがわかったため,1年目に繰り上げて実施した。これに伴い当初の計画を変更し,水槽試験では,予見制御の検証ではなくその準備課題の検証をおこなった。また,システム同定により作成した浮体式風車スケール模型の数理モデルに基づきH∞予見制御系を設計し,その性能をシミュレーションにおいて評価した。現在は,ロバスト性については予見制御と同時に考慮できていない。関連する課題については大幅に進展させることができたが,水槽の移転に伴い実験を前倒ししておこなったことを主な理由とし,ロバスト性を考慮したH∞予見制御系の構成については進展がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ロバスト性も考慮したH∞予見制御系の構成を進める。また,当初の計画通り個別ピッチ角制御可能な風車試験機を製作し実機の準備を始める。また,実験において簡易に風速の予見をおこなうための方法について検討し,その準備実験もおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表をおこなった一部の学会が近隣で開催されたため,それにかかわる旅費と宿泊費が大幅に削減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,個別ブレードピッチ角制御が可能な実機を製作する予定であるが,ブレードのひずみの計測部分が当初の想定よりも,製作上の難易度が高いことがわかったため,次年度使用額については当初の請求分とともに実機の製作代に充てる。
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