本研究は,観測ノイズおよびシステムノイズに関する分布情報が未知の場合における非線形離散時間カルマンフィルタの開発を目的としている.カルマンフィルタは,観測ノイズの分布情報を基に状態の事後分布を推定する問題と,システムノイズの分布情報を基に状態の予測分布を推定する問題とにそれぞれ帰着される.平成30年度は,平成29年度に一部検討したシステムノイズの分布情報が未知の場合における非線形離散時間カルマンフィルタの理論を再検討した。そして、その有効性を数値シミュレーションにより検証した.具体的に得られた成果は以下の通りである. 1.条件付き確率密度推定法を用いてデータから直接観測モデルおよび状態モデルを推定し,それらのモデルを粒子フィルタに適用することにより,観測ノイズおよびシステムノイズの分布情報が未知の場合の非線形離散時間カルマンフィルタのアルゴリズムを導出した.提案法は,推定する条件付き確率密度関数にガウス分布等の制約を置かないため,非ガウスシステムに対しても適用することができる. 2.数値シミュレーションにより,1.で開発した方法の有効性を検証した.数値シミュレーションでは擬似的に生成したデータを用いた評価を行い,提案法の有効性を示した.特に,先行研究であるガウス過程回帰を用いた方法と比較し,提案法はガウスシステムだけでなく非ガウスシステムに対しても有効であることを数値シミュレーションにより示した.
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