昨年度まで実施した結果、けい酸塩系表面含浸工の劣化因子侵入阻止性を示す面積(ビッカース硬度増分×改質深さ)が、W/C=40%とW/C=55%で変化しなかった理由について、供給されるけい酸塩系表面含浸材の量が不足していると考えた。そのため、今年度については、けい酸塩系表面含浸材の使用量を変化し、この面積と劣化因子侵入阻止性の関係について検討を行った。その結果、けい酸塩系表面含浸材の使用量を増加させるとともに改質深さが増加する傾向が得られた。しかし、W/Cの増加とともに改質深さが増加する傾向が得られた。 また、劣化因子侵入阻止性との関連性を確認するため、同一方法で作成した供試体を用いて吸水試験を行った。その結果、いずれのW/Cで作成した供試体についても、吸水率が低下する傾向を示した。しかし、低下傾向は水セメント比の増加とともに低減する傾向を示した。 これら結果、および既往の研究を含めて、けい酸塩系表面含浸材のモルタル中への浸透プロセスについて検討を行った。その結果、ゲル空隙中ではCa(OH)2と反応し、それより大きな空隙では表面含浸材の移動経路となる可能性を示した。そのため、研究当時提案した、改質深さとビッカース硬度増分で囲まれる面積を劣化因子浸透阻止性として使用するためには、母材の水セメント比との関連を考慮して使用する必要があることを示した。 本結果については、現在論文として取りまとめ、投稿を行っている。また、個別の内容については、土木学会年次学術講演会およびプレストレストコンクリートシンポジウム論文集で公表を行う。
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