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2016 年度 実施状況報告書

鋼製橋脚を有する免震橋の破壊解析と想定外地震のための危機耐性評価法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K18136
研究機関埼玉大学

研究代表者

党 紀  埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60623535)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード鋼製橋脚 / 免震ゴム支承 / 危機耐性 / 復元力モデル / 漸増動的解析
研究実績の概要

橋梁等の耐震設計は今まで,想定レベルの地震に対し,構造物が耐力低下までの応答変位が生じないように,設計の便宜を優先して,具体的な破壊分析は必要としていない.近年の大地震などの自然災害の発生を受け,防災能力を向上するために,世界各国の耐震設計に新たな知見を盛り込めるように様々な努力が行われている.しかし,1995年の兵庫県南部地震や2011年の東北地方太平洋沖地震などの想定外地震の発生をきっかけにして,従来の安全性と復旧性に対して,想定外地震が発生しても壊滅的な状態(危機)に陥りにくいという危機耐性の概念が検討されている.
日本の耐震設計は,従来の想定した地震動のみ安全の義務を有することから,さまざまの未然を防ぐことができるように進化している.想定外地震動を受ける免震橋の危機耐性を評価する手法の開発を目指して,危機耐性評価のための数値解析手法の検証と橋梁解析モデルの構築が重要である.
今年度では,免震ゴム支承のために提案した修正Park-Wenモデルの検証について,高減衰ゴム支承の縮小試験体を用いた繰り返し載荷実験および神戸地震動を用いたハイブリッドシミュレーション実験で得られた結果と解析で得られた結果を比較することによって,提案手法の妥当性を検証した.その主な結果として,復元力モデルの実験結果再現精度を示す指標である寄与率に着目すると,他の復元力モデルでの0.9未満に対し,修正Park-Wenモデルは0.95以上と高い寄与率を示している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予想した断面の一部破壊による累積の損傷現象はほとんど起こらず,ゴム支承の破壊は基本的に突然破壊となっている.など鉛入りゴム支承では鉛が破壊時に飛び出しなどの現象も起きまして,ゴム破壊が起こる前に鉛が繰り返し載荷により先に寸断したと思われる.したがって,破壊履歴則として,繰り返しを考慮せず,ひずみ限界を越えると復元力が急低下するものとした.ただし,同じ断面構成した試験体でも,異なる破壊ひずみとなる現象も見られて,破壊限界のばらつきが大きいことが考えられる.ゴム支承の破壊が橋全体に及ぼす影響を分析するために,その不確定性を考慮する必要があると思われる.今後の解析では,例えば全橋の支承のうちに、破壊ひずみを一定の確率分布に従って乱数で生成し,地震応答解析と漸増動的解析を行う必要があると思われる.
一方鋼製橋脚の実験で得られた破壊までのハイブリッドシミュレーション実験結果と提案した曲線近似履歴モデルと高度な一致が見られた.鋼製橋脚の局部座屈による劣化域では従来のモデルより細かく再現できている.

今後の研究の推進方策

これからは,免震ゴム支承の修正Park-Wenと鋼製橋脚の曲線近似モデルを両方用いて,免震鋼製橋脚系橋梁の非線形地震応答解析モデルを構築する.構造モデルに大量の地震動を入力し,漸増動的解析(IDA)より,構造物が倒壊や落橋するなどの動的破壊まで耐えられた地震動強さと落橋ケースと倒壊ケースのそれぞれの発生確率を解明する.
次に,橋梁の危機耐性を定量的に評価する方法を検討する.危機耐性とは,構造物またその一部が破壊しても,構造全体が長期間にわたって機能を喪失するという壊滅的な状態にならないよう,危険性に対し,耐えられる能力と定義する.そのため,鋼製橋脚を有する免震橋の試算例を用い,実用化できる指標を提案する.

次年度使用額が生じた理由

出張旅費などの立替払いの精算中の部分もあり,残りは数千円程度.

次年度使用額の使用計画

資料印刷代などとして使用する予定.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Multiple-Spring Model for Square-Section Steel Bridge Columns under Bidirectional Seismic Load2017

    • 著者名/発表者名
      Ji Dang, Huihui Yuan, Igarashi Akira, Tetsuhiko Aoki
    • 雑誌名

      Journal of Structural Engineering ASCE

      巻: Volumn 143, Issue 5 ページ: 04017005-1-16

    • DOI

      10.1061/(ASCE)ST.1943-541X.0001735

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 水平2方向地震動を受ける免震橋の応答特性に関する漸増動的解析2016

    • 著者名/発表者名
      党紀、蛯沢佑紀、五十嵐晃
    • 雑誌名

      土木学会論文集A1(構造・地震工学)

      巻: 72(4) ページ: 791-732

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ベイズ確率推定と漸増動的解析(IDA)による経年劣化支承(リング沓)の耐震性能評価2016

    • 著者名/発表者名
      党紀,佐藤拓,五十嵐晃,林訓裕,足立幸郎
    • 雑誌名

      土木学会論文集A1(構造・地震工学)

      巻: 72(4) ページ: pp.542-554

  • [雑誌論文] 高減衰ゴム支承の水平2方向・大ひずみ変形時の挙動を表現した2方向復元力モデルの開発2016

    • 著者名/発表者名
      党紀,五十嵐晃,村越雄太
    • 雑誌名

      土木学会論文集A1(構造・地震工学)

      巻: 72(1) ページ: pp.250-262

    • 査読あり
  • [学会発表] 汎用小型無人機(ドローン)を用いた橋梁点検に関する基礎的研究2016

    • 著者名/発表者名
      春田大二郎,Ashish SHRESTHA,党紀
    • 学会等名
      日本地震工学会・大会
    • 発表場所
      高知工科大学永国寺キャンパス( 高知県高知市永国寺町)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-27
  • [学会発表] Preliminary Study on Image Processing Based Real-Time Displacement Monitoring Methods Using Smart Devices2016

    • 著者名/発表者名
      Ashish SHRESTHA, Ji DANG, Xin WANG
    • 学会等名
      日本地震工学会・大会
    • 発表場所
      高知工科大学永国寺キャンパス( 高知県高知市永国寺町)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-27
  • [学会発表] Numerical Model for Seismic Performance Evaluation of Function Scattered Bridge2016

    • 著者名/発表者名
      Bidha L. Joshi, Ji Dang
    • 学会等名
      日本地震工学会・大会
    • 発表場所
      高知工科大学永国寺キャンパス( 高知県高知市永国寺町)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-27
  • [学会発表] 危機耐性と経年劣化を考慮した機能分離型免制震橋の一提案2016

    • 著者名/発表者名
      党紀, 金井寛裕, Bidha L. Joshi
    • 学会等名
      土木学会第71回年次学術講演会
    • 発表場所
      東北大学(宮城県仙台市、青葉区)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
  • [学会発表] 経年劣化免震ゴム支承の耐震性能評価に関する解析的検討2016

    • 著者名/発表者名
      林訓裕,五十嵐晃,党紀,足立幸郎
    • 学会等名
      土木学会第71回年次学術講演会
    • 発表場所
      東北大学(宮城県仙台市、青葉区)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
  • [学会発表] 危機耐性と経年劣化を考慮した機能分離型免制振橋2016

    • 著者名/発表者名
      党紀, 金井寛裕, Bidha L. Joshi
    • 学会等名
      第19回性能に基づく橋梁等の耐震設計に関するシンポジウム
    • 発表場所
      土木学会(東京、新宿区)
    • 年月日
      2016-07-12 – 2016-07-13
  • [学会発表] LRBの経年劣化を考慮した地震リスク評価に基づく道路橋の耐震性能評価2016

    • 著者名/発表者名
      林訓裕,五十嵐晃,党紀,足立幸郎
    • 学会等名
      第19回性能に基づく橋梁等の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集
    • 発表場所
      土木学会(東京、新宿区)
    • 年月日
      2016-07-12 – 2016-07-12

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公開日: 2018-01-16  

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