本研究では、せん断耐力予測式が確立されていないT形断面を有する鉄筋コンクリートはり(T形RCはり)に対して、3次元非線形有限要素解析による数値解析的検討と構造実験による実験的検討によって、T形RCはり特有のせん断耐荷機構を明らかにするとともに、T形断面特有の様々なパラメータがせん断破壊挙動へ及ぼす影響度を適切に反映させた実用的なせん断耐力推定式を提案し、喫緊の課題である建設コスト縮減と効率的かつ効果的な維持管理計画の実現に貢献することを目指してきた。平成30年度は、実験的検討として、過年度に実施した載荷実験結果を統合して再整理することで、圧縮フランジ幅や厚さ、せん断スパン比、せん断補強鉄筋比がT形RCはりのせん断破壊挙動に及ぼす影響を再検討した。また、解析的検討として、3次元非線形有限要素解析による載荷実験の再現解析とパラメトリック解析を行い、T形RCはりのせん断耐力や応力分布等を確認した。実験および解析的検討の結果から、圧縮フランジ幅や厚さが大きいほどせん断耐力が大きくなること、せん断補強鉄筋を有するT形RCはりでは、圧縮フランジによって斜めひび割れの進展が抑制され、圧縮フランジが分担するせん断耐力を期待できることを示した。また、せん断補強鉄筋が分担するせん断耐力には圧縮フランジの影響が少ないことを明らかにした。さらに、圧縮フランジの張出し部のコンクリート分担分を考慮したT形RCはりのせん断耐力の推定式を提案し、既往の実験データとの比較結果を示した。
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