研究課題/領域番号 |
16K18139
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
判治 剛 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80452209)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低サイクル疲労 / 疲労設計曲線 / 公称ひずみ範囲 / 局部ひずみ範囲 / 溶接止端形状 / 鋼製橋脚 / 長時間継続地震動 / 地震応答解析 |
研究実績の概要 |
本研究は土木鋼構造部材に対する低サイクル疲労設計曲線の提案を最終目的としており,平成28年度には,鋼製橋脚を対象として,簡易な骨組み解析による低サイクル疲労照査法の提案を行った.また,実際に地震時の疲労照査を行い,橋脚基部の低サイクル疲労性能を評価した.得られた成果を以下に示す. 1) 溶接止端部の形状を忠実に再現した詳細モデルにおける局部ひずみ範囲と溶接止端形状を再現せず,その周辺に1mmの比較的粗い要素分割を用いた簡易モデルから得られるひずみ範囲の関係式を構築した.両者の関係に影響を与えるパラメータは溶接止端半径のみであり,関係式は継手形式・載荷パターンによらず適用できる点に特徴がある.また,解析結果および試験結果により,その関係式の妥当性を示した. 2) 簡易モデルと鋼製橋脚を梁要素で表現した梁モデルから得られるひずみ範囲の関係式を構築した.両者の関係は継手形式によって異なる. 3) 詳細モデルと簡易モデルの関係式と簡易モデルと梁モデルの関係式から,詳細モデルと梁モデル,つまり局部ひずみ範囲と公称ひずみ範囲の関係式を構築した.両者の関係は溶接止端半径と継手形式によって影響を受ける. 4) 局部ひずみ範囲と公称ひずみ範囲の関係式を用いて,局部ひずみ基準の疲労強度曲線を変換し,継手形式と溶接止端半径の大きさに応じた公称ひずみ基準の低サイクル疲労強度曲線を提案した.また,過去に疲労試験結果と照らし合わせ,提案した疲労強度曲線により鋼製橋脚基部の疲労強度を安全側に評価できることを示した. 5) 鋼製橋脚がレベル2地震動を受けるとき,特にタイプⅠのような継続時間が長い地震動の場合には,道路橋示方書に準じたレベル2地震動に対する耐震設計を満足していても,その基部において低サイクル疲労き裂が発生する可能性があることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では上記1)-4)の局部ひずみの簡易推定法の構築および低サイクル疲労強度曲線の提案を目標としていたが,平成28年度は,それに加えて,提案した強度曲線を用いた鋼製橋脚の低サイクル疲労照査まで行うことができ,当初の予定以上の進捗である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の点に対して検討を進める. ・提案した低サイクル疲労設計曲線は局部座屈の発生状況や,部材の形状(細長比など)などの制約を受けるものと考えられる.そのため,求めた簡易モデルのひずみと公称ひずみの関係式が成り立つ範囲を明確にし,本手法の適用範囲を示す. ・それを踏まえて,対象とした構造部材をモデル化した比較的大型の部材試験体に対する載荷試験により,開発した設計曲線の妥当性を検証する. ・提案した設計曲線を高サイクル疲労にて示されている継手等級分類の形で整理する.例えば,ある疲労寿命に対応するひずみ振幅を基本疲労強度とし,その大きさにあわせて強度等級を分けることを考えている.最終的には,得られた継手等級分類表を設計曲線とともに呈示し,これまでには類のない低サイクル疲労用の耐震設計法を確立する. なお,研究を進める上で問題が生じることは考えにくいが,当初の計画通りに進まないときには全体構想を損なわない範囲で対象部位を絞り込んで検討を進める.
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