本研究は土木鋼構造部材に対する低サイクル疲労設計曲線の提案を目的とし,平成29年度には,平成28年度に提案した公称ひずみに基づく低サイクル疲労強度曲線の適用範囲の拡大,高精度化を図った.また,鋼製橋脚を模擬したモデル試験体による繰返し載荷実験を行い,提案した強度曲線を検証した.さらに,求めた強度曲線を設計実務で採用できるように継手強度等級分類として呈示した.得られた成果の詳細を以下に示す. 1) 鋼製橋脚基部を対象に,溶接止端部の形状までを忠実に再現した詳細モデルにおける局部ひずみ範囲と,橋脚を梁要素で表現した梁モデルにおける公称ひずみ範囲の関係を再構築した.その結果,両者の関係に影響を与えるのは,溶接止端半径,フランジ幅,三角リブ厚とフランジ厚の比であることを明らかにした. 2) 1)の関係式を基に,橋脚基部の継手形式ごとに公称ひずみ基準の疲労強度曲線を構築した. 3) 鋼製橋脚を模した試験体による繰返し載荷試験を実施し,提案した強度曲線を検証した.その結果,橋脚基部の継手形式や寸法に関わらず精度良く疲労寿命を推定可能であることを示した.また幅厚比の大きい橋脚の場合では,基部に疲労き裂が生じるものの,局部座屈の発生により,その進展が停留するため,低サイクル疲労による破壊は生じにくくなることを示した. 4) 提案した疲労強度曲線を基に,継手形式ごとの低サイクル疲労強度等級を設定した.フランジ幅をパラメータとした簡易な式によって精度良く疲労強度を評価できることを示した.これは,フランジ幅2.7mの橋脚まで適用可能なものであり,実用性の高いものである.
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