研究課題/領域番号 |
16K18140
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
海老澤 健正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90332709)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 耐震構造 / SBHS鋼 / 塑性 |
研究実績の概要 |
まず,SBHS鋼の塑性時の挙動を把握するための材料試験を実施した.通常の単調引張試験に加えて,繰り返し挙動を把握するため圧縮引張の交番載荷を行った.ここでは,圧縮時の座屈変形を防止する側方変形拘束装置を独自に付加したMTS 社製疲労験機により,引張および圧縮の大変形の繰り返しをひずみ制御で与えた.その結果,SBHS鋼は従来鋼と較べ降伏比が高く,材料としての変形能が小さくなることが確認された. 次に,材料試験結果に基づき,SBHS 鋼の三曲面モデルのパラメータ同定を行った.高精度な材料構成則である三曲面モデルのパラメータを同定する.SBHS鋼の繰り返し挙動特性は従来鋼と異なるために,個々のパラメータの物理的意味を考慮した従来の同定法では材料試験結果とのかい離があったため,実験挙動を再現するパラメータの組み合わせを数値的に最適化を行い同定を行った. さらに,平板の疲労試験を実施した.その結果,従来鋼と比べて早期に破断が生じるケースが見られた.このケースでは,通常の単調引張り試験結果ように断面が絞られたいわゆる延性破壊現象と考えられ,より検討が必要と考えられる. また,研究を進めていく過程で,溶接による強度変化が重要な影響を与えてるのではないかという着想に至り,材料試験片に種々の加熱・冷却を加えたのちに引張試験を実施しその影響を確認した.その結果,9800度程度の高温に加熱後急冷すると急激に強度上昇がみられる一方,それ以下の温度あるいは徐冷の場合には大きな影響が出にくいことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料試験およびそのモデルの同定までは予定に従って順調に推移している.疲労試験については,平板の試験については終了したものの,接合部の疲労試験については次年度へ持ち越しとなっている.これは,研究を進めていた過程において,溶接による熱影響による強度変化が大きいのではないかという検討が必要との判断に至り,熱影響の検討を現在進めているためである.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては,溶接の熱影響について検討を加えるとともに,溶接接合部での疲労についても併せて検討することで,平成28年度予定していた項目についてまず実施を行う.また,それと並行して,構造としての繰り返し挙動を明らかと鋼製橋脚供試体を用いた繰り返し載荷実験を実施する. これらを踏まえ,平成28年度に構築した解析モデルの妥当性を検証するとともに,SBHS鋼を用いた橋脚の耐震設計での留意点等について検討を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究全体としては順調に推移しているが,接合部の疲労に関する検討が当初予定より遅れて平成29年度実施となったため,その試験体製作費が次年度(平成29年度)使用額として繰り越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
上記に示す通り,接合部疲労試験のための試験体製作に繰り越し分は充てる予定であり,本来の平成29年度の研究経費は基本的には当初予定に従い執行することを予定している.
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