種々のせん断試験を受けている積層ゴム支承供試体を用意して,室内で載荷実験を実施した.具体的なケースとしては,①せん断ひずみ変形(±175%,±250%,±300%),②低温環境(-20℃,-30℃),③積層ゴム支承の種類(RB(天然ゴム系積層ゴム),HDR(高減衰積層ゴム),LRB(鉛プラグ入り積層ゴム))である.載荷方法は,既存橋梁でゴム支承が受ける交通振動を想定して,鉛直方向の繰返し圧縮載荷試験を実施した.いずれのケースにおいても,せん断試験前(新品)では,AE現象が非常に少なかったが,せん断試験後にはAE現象が急激に増加した.また,せん断試験後の繰返し圧縮載荷試験では,最初に検出されたAE現象のエネルギーは,繰返し圧縮載荷中もほぼ変化せずに検出されていた.このことから,繰返し圧縮載荷試験前からせん断変形に伴う損傷がゴム支承内部に蓄積されていたことが推測できる. また,損傷位置標定精度の確認実験では,ゴム内部に加硫接着させた鋼棒先端を引抜くことで発生するAE現象を同定できるか検証した.ゴム内部に挿入する鋼棒は,ゴム表面から10,20,30,40,60,80,100mm離れた箇所とした.また,ゴム供試体内部の鋼板なし,上部側に鋼板有り,下部側に鋼板有り,上下部に鋼板有りの4ケースを用意した.AE現象の同定精度については,供試体ケース間でバラつきはあったものの,ほとんどのケースで50%以上のAE現象が鋼棒先端に同定されることがわかった.すなわち,ゴム内部を伝搬する弾性波速度は遅く同定精度が低くなると考えられたが,ゴム内部で発生したAE現象を高精度で同定できることが示された.
|