研究課題/領域番号 |
16K18145
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堀越 一輝 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (90771965)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 内部侵食 / 浸透流 / 侵食 |
研究実績の概要 |
浸透流による土内部の侵食現象は内部侵食と呼ばれ,土構造物の健全性を阻害し壊滅的な被害を引き起こす一因である.本研究では,日本のみならず諸外国における社会資本の整備および維持管理技術の向上に寄与すべく,土構造物の性能劣化の一因である浸透流による土内部の侵食現象を考慮した盛土の性能評価法を構築することを長期的な目標としている.これを達成すべく,本申請研究の目的は,定量的な内部侵食現象の予測に寄与することである.この実現のため,1) 代表的な土の侵食速度を4種類の異なる実験法で測定する.そして,2) これらの実験結果を比較,分析することで各評価法の互換性を見出す.これにより,3) 土構造物のライフサイクル全体で統一的に使用できる評価法の確立を目指す. 初年度である平成28年度は,欧州諸国で広く使用されている短期間の侵食特性の評価を可能とする侵食実験装置とイタリアで考案された長期的な侵食特性の評価を可能とする上向き浸透流実験装置の2つを導入した. また,鬼怒川堤防および基礎地盤で採取された砂質土試料を中心とした8か所9つの土質試料に対して,粒度試験,締固め試験,透水試験などの土の基本的性質を調べた.各試料の粒度試験から得られた土の粒度分布によって,侵食が開始する初期動水勾配がよく知られたTerzahiの限界動水勾配より小さい値で開始するかどうか(土の内部安定評価)を評価した.そして,上記の導入した実験装置を使用した実験によって,侵食開始後の侵食速度を評価した.この結果はこれにより,対象とした土試料の侵食の発生および進展に関する特性を把握した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請期間の間,同一土試料に対して,4種類の試験法でそれぞれの試験法毎に土の侵食特性を評価する予定である.このうち,平成28年度は2種類の試験法で9つの土試料の侵食特性を評価した.一方で予定していた残り2つの試験法による侵食試験は実施できなかった.これは,予定より多くの鬼怒川堤防およびその基礎地盤の土質試料の基本的な土質物性を調べていたためである.これらの土質物性の多くは次年度に予定していた実験を前倒しに実施し得られた結果であり,これは次年度の研究において必要な基礎データである. 以上より,現在の研究の全体的な達成度は,おおむね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年度に実施できなかった2種類の試験法による土の侵食試験と日本に存在する地盤材の侵食特性のデータを集積するため,前年度実施した2種類の試験法によって,前年度とは異なる土試料を対象に侵食試験を実施する. その後,すべての実験結果を整理し,短期および長期の二つの侵食特性を考慮にいれた侵食評価法を提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には,3種類の実験装置の導入を予定していたが,そのうち2種類の実験装置の設計が予定以上に時間を費やしたこと,予定しいたより多くの土を対象に土の基本的な土質物性を測定したため,該当年度中で残り1種類の実験装置は製作には至らなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は,前年度,実施できなかった2種類の試験法による土の侵食試験と日本に存在する地盤材の侵食特性のデータを集積するため,前年度実施した2種類の試験法によって,前年度と土試料を変えた侵食試験を実施する.その後,すべての実験結果を整理し,短期および長期の二つの侵食特性を考慮にいれた侵食評価法を提案する.
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