本研究では,これまであまり検討されてこなかった土構造物のライフサイクル全体で使用できる内部侵食現象に関する性能劣化の評価する侵食開始後の土の内部侵食特性について着目した. 土の侵食の進展の速さを把握するため,洪水時に噴砂が確認された付近で採取された22つの堤防土試料に対して,基本的な土の物理特性試験の実施とHole erosion testや上向き侵食試験により土の侵食特性を評価した.また,得られた土の侵食特性と過去の諸外国で実施された実験結果を分析し,土の侵食特性とその土の基本的な物性値との相関を確認した.検討した土の物性は,液性限界,塑性限界,塑性指数,細粒分含有率,粘土含有量,最大乾燥密度,最適含水比である.これにより,適用範囲が不明確なHole erosion testが対象とする土の液性限界の値を確認した.また,土の固有の物性値である最適含水比と粘土含有率から侵食速度指標(Erosion rate index)の概算式を提案した. また,日本の河川堤防の土を対象に侵食特性を調べた事例研究は少ないため,ある河川の堤防から採取された土についての侵食速特性についてもとりまとめをおこなった.本研究で対象とした日本の河川から採取した試料の侵食速度は,緩慢なものであると推定され,対象とした河川堤防の試料は,土内部の侵食に対して耐性が大きいと評価できる.また,得られた土の侵食特性とその土の基本的な物性値には,ある程度の相関があることを確認した.
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