近年,集中豪雨による河川堤防や斜面の崩壊が人命や財産の被害を生じ,社会的な危機感が高まっている状況である。キャピラリーバリア(CB)は砂層とその下部に礫層を重ねた土層構造により生じる一つの遮水機能であり,すでに,古墳の造営技術に用いられており,1500年以上にわたる長期供用性が保証されている。本研究では,不飽和土構造物である河川堤防や斜面などの降雨浸透に対する安全性を高めることを目指し,疎水性をもつ土(以下,疎水材)を用いて,長期的に高度な雨水遮断機能と排水機能をもつCB盛土の可能性について検証を行った。 平成28年度では,まず人工的に疎水材を作製し,その物性特性を把握した。また,新たな連続加圧方式の保水性試験装置を用いて保水性試験を行い,疎水材の保水特性を評価した.得られた水分特性曲線の結果より,空気侵入値と水浸入値,そして水侵入値の比較より,疎水材のヒステリシスが親水材より大きいという特徴を把握することができた. 平成29年度では,疎水材の遮水特性の把握のため,水浸透値試験や長期自然浸透試験を行った。その結果,疎水材は長い時間にわたって非常に高い遮水性を維持した。また,CB盛土の砂層に疎水材を適用した室内模型実験を行い,異なる3ケースの降雨条件においてCB盛土への降雨浸透を検討した。親水材の場合,全てのケースで降雨浸透が生じたが,疎水材の場合,砂層への水の浸透はなかった。この結果から,疎水材の降雨浸透に対する遮水性が優れていることが明らかになった。さらに,模型実験と同じ試験条件下で浸透流解析を行い,各条件かでの土中水の流動がほぼ類似であることが確認できた。よって,従来のCB盛土の砂層に疎水材を適用することで降雨に対する土構造物の安全性が改善されるという安全問題に一つの有望な対処法を提示したと考えられる。そして,これは,地盤災害による被害や社会的危機感の低減につながっていくはずである。
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